十八話 終幕 今へと至る
最後のお話です。
施設での指導を数年受けた私は戦場へと駆り出されました。
白い世界は人の死体の香りが漂う荒野へと世界を変えました。
そこで指示されるまま、自分の身を守るため人を殺し続けました。
初めて殺したのは私を襲おうとした村の子供だったでしょうか。
意外とすんなり殺せました。
腰あたりに装備していたナイフを軽く子供の首を切っただけで絶命しました。
命の身軽さというのでしょうか、そんなことですぐなくなるものなんだと肌で感じましたね。
殺し続けて5年やそこらでしょうか100人から数えてませんがそのころに私を拾ってくれた上官が現れました。
この依頼を受けろと...そう私に告げに来ました。
私はいわれるがままにその依頼をこなしました。
するとその上司からこの世界から消えたいか?と問われました。
私はわからないと答えました。
そうか、今とは違う生活をしたいかと再び問うてきました。
今とは違う生活というのが想像がつきませんでした。
私にとっては今か孤児院の2つの生活しか知らないのです。
そう問われても何をイメージすればいいのかわかりません。
私はどんな生活ですか?と上官に問いました。
答えは来ないだろう...そう思いながら。
すると上官は、殺しのない世界、ただ疲れて飯食って好きなことするとこだと答えました。
当時の私は意味が分かりませんでした。
想像ができませんでした。
ですが、自然と気になりました。
だから、私は行ってみたいと答えました。
そこからは早かったです。
私が知らないうちにすべての準備が整っていて答えを言った1週間後にこの国へとやってきました。
戸籍から、家生活資金まですべてが整っていました。
いつの間にか高卒の証明も用意されていました。
最後に別れるとき、上官は「もし、生きる理由というのがわからなかったら、何かをしてあげたいと思える人を探してみろ」と言いました。
今になればなんとなぁくわかります。
こちらに来てからはわからないことの連続でしたが充実というものを感じました。
きっとこの生活を上官は与えたかったのでしょう。
今になってはなぜこんなに良くしてくれたのかはわかりません。
でも、私はあの人にとても感謝をしています。
「と、こんな感じです。私のほうが割合長めに話しましたけど付き合ってくださりありがとうございます」
「いえいえいいですよ。アリサさんの生い立ち知れてなんか嬉しいし」
「そうですか!よかったです」
久々に誰かと交流を持てた、知らないことを話してくれたというのはなかなかに心地いいものだった。
今まで全くなかったというわけではないが、最後にこんなに話したりしたのは数年前だっただろう。
「また、色々聞かせて欲しい」
「はい、また誘いますね」
時計を確認する。
ちょうど6時を回っており、夕飯の時間になる。
こちらで採るのは迷惑になるのでここらへんでお暇させていただこう。
「では、僕はそろそろ帰りますね」
「あっ、もうこんな時間。そうですね」
「じゃぁ、また」
「はい、また会いましょう」
lie 明日を得られない人たちと 星宮 穹 @hosisora
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