十七話 三幕 名前を思い出せないあの子

 僕の中学生活は一人から始まりました。

 この頃の人たちはみんな深い仲というものを意識しだしました。

 恋愛でも友人関係でも...。

 そんな中僕みたいな人間は一人になるのが道理でしょうね。

 しかし苦ではなかったと...、思います。

「思う、ですか?」

「はい、うまく中学時代の頃が思い出せないんですよ」

「そういうことですか」

「続けますね」

 いつも一人でいました、そんな生活をしているといじりの対象にされたりして、何かするごとに邪魔されたりしていました。

 よかった点はいじめのような事態は起きなかったことですかね。

 まぁでも、うんざりはしていました。

 一人のほうが気楽すぎてしまい授業をサボることもしばしばありました。

 そんな生活を続けて2年生の秋頃でしたかね。

 転校生が来ました。

 とても特徴的な娘だったと思います。

 しかし、保健室によくいる娘だったと思います。

 名前は、思い出せません。

 何か約束だったような...。

 今になってはもう何があったのか。

 でも、一つわかることはきっと僕はその娘のことが少なくとも嫌いではなかったこと、思い出そうとしたら心が苦しくなりますがね。

 でも、次会えたら思い出せるそんな気がします。

「その娘はどうしたんですか?」

「ええ、転校しました。また...」

「そうなんですか...この話に続きは?」

「これがオチです..短い話しかできなくて悪い」

「そうですか...あっ口調タメになりましたね」

「うん、なんか昔話はあの口調でやるのがいいかなぁと思ってね」

「そういうことですか」

「あっ気になることとかあります?答えますよ」

 短い話をしてしまったので名誉挽回を...と思いそうアリサさんに伝える。

 でも本当に短いなっと心の底から思う。

 思い出の少ない人生だったがこんなに短い事しかしゃべれないとは...。

 アリサさんは結構話してくれたのにな。

 ため息が出そうだが、つまらないと勘違いされても困るので出ないように堪える。

「質問いいですか?」

「あっ、はい」

 堪えているとアリサさんから質問がとんでくる。

「優さんはその人と友達とかでしたか?また出会えるといっていましたのでいい思い出か、心に深く残るものでもあったのかなと」

「そうですね」

 僕はなんとなく虚ろな心になる。

 考えようとするとやめさせられるようなそんな状態に。

 でもなんとなくわかる、彼女との関係性。

 さっき話している中わからなかったが、今なら...。

 深く考えれば考えるほど脳内がグルグル回る。

 きっときっと悪い中ではなかったはず。

 どう...いえばいいか。

「少なくとも...友達だった。一緒にいると心が落ち着く。そんな人だったと思う」

 そう伝えアリサさんの目を見るととても真剣な眼差しで僕を見つめていた。

「そう...ですか」

 優しいのに何か淡々と考えているようなそんな視線。

 何度か頷き、「そうですか...そう。そうなんですね」と何度も言い僕を見つめ「質問に答えてくださりありがとうございます」と僕に伝える。

「ああ、はい。もう質問ないですか?」

「はい。では最後に私が話しますね」

「そうですね。あとはアリサさんしかしゃべれないけどネタは大丈夫?」

「はい、というか私もこれで最後ですね。では話しますね。この場所に住むことになるまでのお話を」

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