Vigilante.No.ⅵ【屠殺羅刹】
「此処でする必要或るんですか?張り込み」
「必要があるに決まってだろ?情報屋の彼奴が言うには材料を物色するって
言うんだ」
「胡散臭いってご自分でおしゃってましたよ?」
あまり気乗りしないでのであろう。声が曇る。
「煩い。声を抑えろ。ばれるだろ」
警部と補助捜査官が囮と成るのは碧空達の縄張りからと距離の或る場所。
意味ありげに住人が屠殺羅刹の森と噂される盛り場の一つ。
言わば逢引盛んな森である。
近くにある露天酒場付近で互いに品定めて気に入れば手を取って屠殺羅刹の
森の奥で事を楽しむ。
一時の情事を愉しんで後は縁も縁もない他人同士に成り果てる。
面白いことに檻橋周辺とはちがい屠殺の森には情婦がいないことだ。
女を物色する男もその逆もみな素人だ。
それにもう一つ素人同士の情事を覗きの趣味を輩も集まってくる。
彼等は実際にその場所に脚を運んで素人の情事を覗くわけでない。
蝋人製作技術の発展した過程で生み出された義眼に良く似たカメラを元に
空中に浮く特殊な機材を使う。
一般的にはドローンと呼ばでるが彼らの隠語では視虫の方が馴染みが早い。
鬱蒼と茂る暗い木道の中を余り大きくもない羽音を立てて宙に浮く視虫。
最初から他人の情事を覗く視姦癖のある輩の中でもこれらの機材を揃えるには
ハードルが高い。
その中でも類を見ないほどの視認性能を持つ視虫が一組のカップルを映し出す。
ショートカットのお固いビジネススーツのあまり凹凸のない女の胸に
ぎこちない動きで男の指が這う。
互いに顔を寄せ男が女の耳にボソボソと告げる。
一度は了承したもののいざとなれば女が嫌がると言うのは良くある。若しくは焦らしているのだろう。
どちらにしても視虫を飛ばし覗き観る覗人の目にこのカップルは餌と成り得た。
ガサツな漢の指使いと初な仕草で拒む女。
興味を惹かれる覗人は自室の奥で喉を鳴らす。
「来ました・・・。一匹・・・」
「良し。掛かったな。そいつが奴かもしれない。旨くやれよ」
特に意識ぜずに恩錻が履いた言葉のそれが語彤にはなぜか命令に聞こえた。
捜査任務の手はずとすれば。屠殺の森で恩錻と語彤が逢引紛いに絡み合うい
寄ってくる視虫の電波を追いかけ操る覗人の場所を突き止める。
個人的な趣味で覗くなら法規ギリギリに逃しても良いがそれが蝋人鬼を繋がるなら捜査員も真顔になる。
囮となる公僕二人の顔がばれるのも不味いから少し離れた場所でワゴン車が弐台並んで監視と妨害を担当する。
(今日は電波の入りが悪いな・・・。もうちょっと寄ってみるか?)
暗いアジト部屋の中で視虫を操るジョイスティックを前に倒して移動させる。
「まっ、前に出ます。視虫が此方に来ます」恩錻の頭に手を回し引き寄せ耳元に告げる。
「旨く行きそうだな。予定通りに始めるぞ。演技で良いんだから感じで魅せろよ。
「はい・・・あっ・・・」恩錻の感覚で言えばスイッチが入るとでも言うだろう。
対して語彤は準備が出来てはいなかった。男女の感じ方の違いと言える。
男がいきなり固いであろう乳房をグイと鷲掴みに掴むと首筋に顔を寄せ舐める。
女が喘いで首筋を上げる。
(何だ。我慢できないかよ?ちょっとは察してやれよ。下手糞だな)
(あれ?女も、まんざらじゃないってか?)
「どうだ?旨く言ったんだろうな?此方は大恥掻いてるんだからな」
ペリペリと粘つく偽顔の人工皮膚を剥がしながらワゴンの中で恩錻が問う。
「待って下さい。もうちょっと・・・」バックアップの作業員が機器のダイアルを
調整する。
「おい?語彤。大丈夫か?」一応の気遣いでは或るがそっけなくもともとれる。
「私は大丈夫です。義務ですから」
カーテンの奥で破れた服を脱ぎ捨て自分の愛液と恩錻の白濁が交じる下着を取り替える。
声の調子が何時も変わらぬと思い恩錻はワゴンに据え付けられた機器を覗き込む。
「盛況でしたね。七ツ。七ツですよ。移り気な奴らですから。こんなに数が集まるなんて」
「そんなのはどうでも良いんだよ。探知出来たんだろうな?居場所確認できたのか?
「えっと。七ツの内。六つまでは判明しました。解析できてないのは一つですが」
「そいつだ。そいつが本命だ。使える何かは或るんだろうな?」
「居場所が判明しなかったのは。恐らく有線だったからでしょう。行動電波が拾えなかったんで。
今ここではわかりませんがちゃんと解析すれば何かつかめるかと」
「なるほど。手強いな。だがなんとかなりそうだ。おっ。おつかれ様。語彤」
「お疲れ様です。椀警部」先程まで互いに肌をあわせ求めあっていたのに。
事が終われば、それ仕事なのだろう。
目をあわせ言葉を交わすが互いに簡素でおざなりなものである。
七ツと飛んだ視虫の操人の内の6人は隠れて住まう部屋に公安が徒党を組んで雪崩こみ
その日の深夜に至り付く前に鉄枷を後ろ手に括られる。
当然、視虫も機材も没収されるか其の場で公安員に全て壊されるかのどちらかだ。
囮を使う捜査となれば関わる人員の生活にも影響が出る。つまりは顔が知れるのは不味いとなる。
それが男女の絡事と成れば尚更で。掴んだネタを雷電網のサイトで売りさばく輩も居るかも知れない。
故に公安は迅速かつある意味乱暴な方法を取ったのは否めないだろう。
もっとも囮を演じた恩錻は顔に特殊な仮面を貼り付け語彤は人形特有の機能を使い顔部分を取り替え
毛髪等も一時的に別のものにすり替え正体を隠してはいた。
結果。幸いな事に視虫達が覗き視た二人の情事は一般には出回ることは無いだろう。
【申告・・・
本日、捜査業務に置いて実行された椀・恩錻警部との共同作業の記憶付随する
感情現象の削除を申請】
【受領・・・精査・・・結果。
通達。貴殿個体は公安捜査補完型・標準蝋人で有る・・・
されど。配属直前の緊急メンテナスにおいて。汎用ヒトノイド規格への適合を実行済
従来の査補完型よりも性能が向上・及び準ヒトノイドと認定された為に全ての行動基準はそれに準ずる。
よって申請された該当記憶付随する感情現象の削除は不可。
警告・・・
補完型制御皇后基準の発生条件は本日より完全無効
準ヒトノイド総合適合条件に強制吸収・留意されたし】
囮をした時に偽装していた部品をメンテナンスルームでオリジナルへと換装した時の
公安主事管理AIとの記録がそれだ。
改めて考えを整理してみればこの任務に付く前と恩錻に会ってからの心情に
変化が或る。
最大の変化はついさっき囮であっても捜査業務で行った情事の記憶を削除して欲しいと申請した事だ
以前のままであれば極めて平坦であり一つの感情記録として保存されるものでしかない。
しかし。そこに羞恥と甘美な快楽が忘れられない。それを受け入れられすに嫌悪に
嫌う自分が居るのも確かで或る。
先に眠る恩錻の寝台に体を滑り込ませ背を向けて眼を閉じる。
あの腕の中で眠りたいと願い。あの手で触れて欲しいと想い。寝返りを打って弄ってやろうかとも本気で考える。
「やっぱり公安上層部ってのはケチなんだな。車壊したから何とかしてくれ
って言ったら回してきたのが・・・昨日の捜査ワゴンってどれだけケチなんだよ。
こうと知ってたらあの時もっと脅しておくんだったな。ほら。御前の分」
「有難う御座います」短くうなずき恩錻が買ってきた珈琲を手に取る。
出来るだけ慎重に指が触れないようにだ。
「こんな所で待っていてもしょうが無いのではないのですか?」
「んっ。今は待ちだろ?他に車置く所もないし気にする事も無いだろうに」
7つ目の視虫の解析が終わるまで恩錻達はすることがなかった。
署に詰めていいても昨日のこともあるから変な噂の一つもたつかもしれないと
恩錻は車を出すもっとも巡回パトロールは面倒だからと言って例の屠殺羅刹の
森の休憩駐車場にワゴンを止める。
「別でに此処でなくてもいいのに」ハンドルを握る語彤がボヤく。
「何だ?気にしてるのか?御前」こちらを見もせずに恩錻は珈琲カップを傾ける。
「演技だったろ・・・・?」
「はい・・・・」フロントガラスの向こうの風景を見つめたまま強く頷く。
「まっ。そうだろうな」答える声に動揺を感じる。
「貴方もそうでしょ?仕事ですよ。私のことより視虫の数を気にしてた癖に」
「そりゃ仕事だしな」意味もなく重く長い沈黙が流れる。
「舐めろって言ったら。御前。舐めるか?」
「業務でしたら・・・義務ですし・・・」
ビクリと心が跳ねる。瞬時に態度に動揺が出ないように義体の制御を行う。
この時ばかりは自分が蝋人であることに感謝する。
「まぁ~~~。そうだろうな。」恩錻は窓の硝子に肘をついてそっぽを向く。
「もう一度。言って下さい」
真っ直ぐ前の風景から眼をそらさずに告げる
「え?」
恩錻の手の中で珈琲カップが揺れる
「ですから。もう一度言って下さい。・・・強く・・・しっかりと」
「舐めろ・・・語彤。俺のを舐めろ・・・」
心境の変化を捕らえきれぬままそれでも語気強く言いつける。
「はい・・・お舐めします」
待っていなかったと言えば嘘になる。むしろ期待さえしてた。
人種の動きより早く恩錻の席にと身を屈め衣服を無理にもどかしくも開ける。
「メンテナンスを受けたのです。配属される前に。上位互換仕様にされたんです。
ヒトノイドに近く成ったんです。飽く迄類似品ですけど。主人を求めるように。
仕えるように。
だから拒めないんです。受け入れちゃうんです・・・嘘。欲しいの。」
自分が驚くほど素直に言葉が漏れる。言いつけられ体が答え命令を求める。
驚愕しそれでも直ぐ側で語彤の吐息が掛かれば恩錻の一物が疼き出す。
(通達・7つ目の視虫の解析が終了。線付人形の操者のおおよそ潜伏先が判明。
至急向かわれたし)
緊急無線がスピーカーから流れ二人の体は膠着する。
「くそ。ここでか?此処でかよ。殴ってやる。絶対殴ってやる。ヘタレ鑑識め。
出せ。語彤。それじゃない。車だ。車。弄るな!。戻ってこい!捜査官」
ピンと音がして語彤の表情が変わる。お預けを喰らい愚痴る恩錻を放り出し
アクセルを踏んでハンドルを斬る。
「知ってたんですか?私の体の事」高速道路下の凸凹道をタイヤを軋ませ
ワゴンが走る。
「嫌。知らない。稀有な機体だとは聞いたかも?そもそも俺は人形に疎いんだよ。
いままで誰も寄せつかなかった。過去の因縁ってやつだ」
語彤が見出した衣服を車内で直す。
「何故?私を受け入れたんです?拒む事も出来たのでは?」
無理矢理ハンドルを切って問う。
「言わないとだめか?好みなんだ・・・貧乳がっ」
「そこですか?そこですか?なんか悔しい。すごく悔しい」
「ぐへっ」
グイとアクセルが踏まれ加速が掛かると車体が跳ねて恩錻の頭が天井に打つかる。
「此処だ。やつは此処に居る」
恩錻が示した場所は公安無線の位置情報とは少しずれている。
指定された場所は廃棄自転車の跡でしかない。
あれこれと周辺地図をモニターで確かめ恩錻が指を指したのがこの場所だ。
鬱蒼とした木々に埋もれた奥に薄暗く奥へ続くトンネルが見える。
「どうして此処だと?」既に感情を平坦化し捜査補完モードとなった語彤が問う
「感だ。警部の感。・・・・あと適当
【強制機体膠着・意識LV3を維持。待機硬直始動・・・
補助命令Vの25を実行・解除条件・椀恩錻の意識消失】
甘いな・・・俺も・・・二度目だし・・・後は頼むぞ。語彤」
ガツンと衝撃が疾走り語彤の義体が止まる。極めて危険な状況下に
置いて発動される強制コマンドの一つ。
こんなコマンドをあのいい加減な恩錻が知ってるは思われない。
一度だけ動けぬ語彤の顔を見るときすびを返し恩錻がワゴンを降りていく。
歩き悪い草木道をかき分け歩く途中で拳銃を抜き弾倉を覗く。
しっかりそれが6発は収まってることを確信し手首を返し弾倉を戻す。
暗く長いトンネルの奥のその先に線付人形の操人・箱檻橋の蝋人鬼が蜷局撒いて
待っていると恩錻は知っている。
なるほどそれはいかにもだろう。
暫く昔は列車の保管倉庫と言うところだろう。崩れ溶けた車体や其の部品が転がる。
進む脚が向かう先に壊れた蝋人の残骸が転がる。
漢であったり女であったり幼年の者も居る。
大体はこわれてうごかないが時々ゆらゆらと頭を揺らしたり
あからさまに方向を指差す蝋人の遺骸もある
(遊んでいやがるな・・・面倒臭いぞ)此処に入った時から視虫の気配があった。
箱檻橋の蝋人鬼が視虫を使うの容易に推測できた。
一種の快楽主義者であろうが同時に苦労人でもあろう。
職人気質と言ってもいいくらいだ。それもすぐに手に取れた。
箱檻橋の蝋人鬼はかわっている。特殊すぎるのだ。二度手間でもあろう。
人形や蝋人を探しそれに自前の道具で線をつけて強制的に操る。
その手順を踏んでから態々別の獲物を探し操る線付人形に殺させる。
更に事がおわればその線付人形の頭を吹き飛ばす。
所謂。二重殺人だ。これだけの手間と作業をかけてまで蝋人を
殺すのには気力が居る。
最初の一人は征服感を満たすため二人目は殺戮快楽。
最後に頭を吹き飛ばすのは破壊衝動だろう。
これだけ揃えば究極のサイコパスとなるが恩錻に言わせれば変態野郎と変わりない。
「よう!よう!。
中々頭のいい。警部さんだ。二人一組の公安が中間を置いてくるとは情けない。
たった一人勝てると思うのか?我が兄弟」横倒しになった車体瓦礫の上で
蝋人鬼が痣けて嘲笑う。
「俺には兄も弟もいない。だがしかし・・・
よく知る姿と見知り置こう。椀・杨錻」
「ひゃっほ~~~、覚えていてくれたとは光栄だよ。我が兄?弟?
それでぇ~~?可愛くて乳房のちっちゃいお嬢ちゃん人形はどこかなぁ~~~?」
黑からの手袋の中に紛い物の銃をにぎり杨錻がぶらぶらと腕を振る。
「最初から御前の狙いは彼女だろう。ちっちゃいとか言うと跡が怖いぞ?
置いてきたのも一人で来たのも理由は一つ。中間を線付にしないためだ。
「相変わらず頭はよく巡るな。恩錻。だがそれで封じ込めると思うのか?」
杨錻の口調が変わる。軽口を叩いたりかと思えば冷静な紳士とクルクルと変わる。
「私が何も用意しないで。御前を招き入れると思うのか?
線付人形は私の大事な愛人だからな。愛人は多い方が良い」
ダラダラと揺らした腕が宙に上がる。
ヒュンと風きって糸線が煌めき転がる蝋人の背中に盛る。
事切れ堕ちた蝋人遺骸の眼に光が宿るとのそりと手を地に付いて体を起こす。
たとえボロボロであろうとも蝋人である。人種より早い。
グイと膝を折って構える前に四肢が跳ねる。
BANG.BANG.
恩錻の拳銃が弐度跳ね。蝋人の頭が砕けて脳液が飛び散る。
「くそ。早いな。ヒトノイド化してるのか?」
腕に自身が或るはずなのに2発も使ったのに愚痴る。
「ひゃっはぁ~~~。休んでるひまないんてないんだよ~~~。
次はこっち。こっしだよ~~ん。恩錻くぅ~~~ん」
どっかの歌謡アイドルの様にポーズを決めて腕を振り上げる。
線糸が煌めき柱の後ろに刺さると影から線付人形が顔を出す。
BANG.
柱に手を掛け起き上がる前に一発で頭を撃ち抜く。
「流石だな。恩錻。即座に習性するとは。馴染むんだろう?拳銃が
殺しが。あの時の感触がのこってるだろ?しかしすぐ弾は尽きるぞ」
杨錻が腕をふる度に線糸が煌めき蝋人遺骸が立ちあがり跳ねて跳ぶ。
すぐに弾が切れるのは眼に見える。杨錻が仕込んだ場所である。恩錻には振りだ。
「そぉれ~~~~。もういっぴき~~~。こっちにも~~~。あっちにも~~~」
高く嘲笑う杨錻の越えた耳に煩く集中出来ない。
高ささえ違うがそれはよく知る自分の声でもある。
運良く飛びかかれる前に撃ち抜ける時もあれば。鋭爪が肌を刻む時もある。
「そろそろではないのか?弾も尽きるし。何より中年だろ?
若い女の体を愛でるのも億劫な年頃だろうに。そろそろ逝き給え」
牽制と〆。その役割をもった線付人形が二体迫る。弾倉に残すは1発のみ。
BANG.
一つ弾いて頭が吹っ飛ぶ。砕けて散った人形の部品をかい潜りもう一体が迫り括る。
目配せ一つ瞬いて体を回して右手を下げ薬莢を捨てる。
同時に左手がスピードローダを掴に弾倉に弾を装填する。
利き腕を戻し撃鉄をお越し引き金を引く。
BANG.BANBG.
二体目の人形が砕けて大地に堕ちる。
「2体の攻撃は同時じゃなかった。隙間があった。それが御前のミスだ」
「クィックバックスローリロード。未だに衰えてないとは堅気な奴だ。」
「最近。腹は出てきた。確かにに腰を振るのも面倒とも偶に思う。
・・・だが。鍛錬は怠らない。御前が此処に居る限り」
ガクンと膝を付いたのは箱檻橋の蝋人鬼・杨錻だ。
確かに2体の人形の攻撃は効果的であった。状況的にも杨錻が有利だ。
残る一発で最初の人形を撃ち。背面リロードして2体目を撃つ。
三発目は勝ち誇る杨錻の腕に鉄槌を下す。
「確かに御前の言うとおりだ。
だが。御前の弾では死なぬ。私の世界でも御前は邪魔なんだ」
迷うことなく恩錻が狙いを定める。次の一撃が止めだ。
「いひっ。最後に勝つのはいつもおれだも~~~ん」
BANG.
淀む空気に拳銃が跳ねる。あたった先は天井の瓦礫。
「うぐぐ・・・」
「甘かったようだな。とは言え私の勝利だよ。椀・恩錻君。」
「貴様?な・何・・・を」的をはずのを許さない右腕に激痛が疾走る。
ボシュと2回めにおとが成ると上腕に弾が当たる。
「うげっ」三つ目は首の後ろだ。
腕と背かなに打ち込まれた弾の尻に細く煌めく線が微かに見える。
恐らく其の先は杨錻の持つ特殊な銃もどきに繋がているんだろう。
「君は拳銃や兵機に詳しい。とても詳しい。しかし代わりに特殊兵機には疎い。
やはり中年だからな。世情には疎い。君に打ち込んだ弾は特殊弾だ。
勿論。聡明な私が作ったものだ。十分気をつけてもいたよ。
発射装置の近くに誘導するのには少々骨が折れた。
そしてこれで何が出来ると思う?楽しみ給え。恩錻君。」
恩錻の右腕が上がる。自分の意思ではないない。
ゆっくりと硬く銃を握った右手が動く。カタカタと揺れる重厚の先に右膝が或る。
「よく。わからないだよ。俺は。でも煩く言うんだ。
こいつは人形用に開発されたものじゃないってさ。俺がが言うんだよ。
でもなんか人種より蝋人の方がうまくいくんだよ。ふしぎだろ?」
「つ・・・つまり・・・これは人種を操る為の物だど?こんなことって
自分の体で或るはずなのに一切言うことを聞かない。
自分の脚に銃口を定めたまま足掻く。
「BANG.」恩錻の耳に届いたのは箱檻橋の蝋人鬼の口真似が実際発砲音かわからない。
だが確実に恩錻の右膝がく弾け血飛沫が飛び散る。
「ぬはっ・・・」四肢を失った恐怖と痛みで悶絶し喘ぐ。
「見るに耐えんな。恩錻。
弄ぶのは好きじゃない。楽にしてやる」
激痛に耐え頭を振って意識を集中する
箱檻橋の蝋人鬼の宣告に抗うも決して逆らう事等出来はしない。
銃を握る右手が勝手に動き自分の頭に突きつけられる。
「後は・・・頼む・・・語彤・・・碧空」ふっと意識が溶けて闇に堕ちる。
BANG.
轟音ひとつ響いて椀・恩錻の体は大地に転がる。
【解除条件・椀恩錻の意識消失・確認
強制機体膠着解除・意識LV5をまで復帰・全膠着硬解除・補助命令Vの25を実行開始
疑似ヒトノイドモード実行・・・解放・・・疑似ヒトノイド化完了・・ヒトノイド・語彤覚醒】
瞳の中で文字が流れると語彤はワゴンから飛び出す。
当然至急されたばかりのワゴンは半壊となる。
トンネルの道を疾走るわけではない。
ヒトノイド化した語彤は最適化されたルートを真っ直ぐ疾走る。
「お願い。間に合って・・・生きて・・・恩錻様」
障害物が直線上にあっても意味はない。
人の大きさの弾丸となった語彤がコンクリートの壁を柱を一撃で
粉砕して真っ直ぐ進む。
「あれ~あれ~~?根性あるじゃん。恩錻ちゃんそれとも怖くなって
失神しちゃったのかなぁ~~~?」
うんが良いと言うのだろうか?それとも誰かの悪戯か?
自分で脚を撃ち放ち吹き飛ばしたショックと出血で意識を失う。
奇しくも一瞬ずれて引き金を引かせようと送った指示は有線であり距離が
離れてれば僅かにずれる
実際には意識がとんで体の力が抜け倒れこむ後に発砲が起こる。
箱檻橋の蝋人鬼は的を外した。
「運を味方に出来るのもこれ一度きりだぞ。恩錻」
思い通りにいかなかったがもう一度引き金を引かせれば良いだけである。
蝋人鬼は黒革手袋を握りしめる。
「下がりなさい。蝋人鬼」凛とした声が響く。
「私は公安局迷宮課所属。捜査保管蝋人・語彤。ヒトノイド。
ヒトノイドの外殻に御前の針線は刺さる事はない。
私は其の人を助けたいだけ。下って」
相手がヒトノイドとなれば分が悪い。
絶好のチャンスではあるが自身も怪我を負っている。
「何れ。あいまみれようぞ。可愛い蝋人。御前が最初の狙いだったからな」
「否。これが最後よ。公安が貴方を捕まえて捌いてもそれは違う。
止めを指すのはあの人・・・馬酔木碧空。其の人よ」
「・・・・馬酔木碧空。其の名覚えておこう」
短く吐き捨てると箱檻橋の蝋人鬼はきすびを返す。
【公安捜査保管蝋人・語彤・疑似ヒトノイドより音電
箱檻橋の蝋人鬼と対峙。身体的特徴発覚・指名・椀杨錻。(線付人形操者)
容姿及び対峙場所に付いては添付資料を参照されたし
追記・公安職員から伝言有り
(恩錻)後は頼んだ・・・碧空
(語彤)お願いします。止めをさして下さい】
雑多ざわつく蝋人御箱の檻橋の食堂。
麦酒のアルミ缶に上に腰を下ろし腕を組んで構える馬酔木碧空が顔を上げる。
「任された・・・。動くぞ。野郎ども・・・全員だ」
あいかわらず白跳羽のジャケットを羽織その下は下着姿の词语が
隣立ち語彤の伝言を皆に伝える。
以前から手はずが整っていたのだろう。
蝋人御箱の檻橋は与えらた仕事にと掛け回る。
万を持しての登場と成るがこんな時こそ壱兵衛が顔を出せば良いとも思う。
それでも自分が立てる証であると心に決めて立ち上がる。
食堂の外には違法改造された三輪バイクのエンジンが未だ遅そしと唸りを上げる。
今宵。狩りが始まる。
蝋人御箱の檻橋に高く紅く昇る月世の寄るに二つの鏡を跨いで狩りが始まる。
獲物は人と蝋人を繋いで殺す悪人ひとつ。
狩るのは懶怠者の体に二つの心をもつ漢。
狩って狩られてどちらが散るか?知って知らずと御月が嘲笑う。
今宵に一つ狩りが始まる。
ヒトノイド・Vigilante 一黙噛鯣 @tenkyou-hinato
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