最終話 リセット

ゲームのタイトルも決まり、ようやくゲームも完成した2月5日。


彰は、この日からゲームの広報活動に八重樫とともに回ることになった。

この日は動画配信サイトでのイベントに出席し、また別の日には、広告代理店に営業に行き、新作ゲーム、”Vertical Memories”の広報活動に励んだ。


動画配信サイトでのイベントでは、有名声優さんとご一緒する機会があり、彰は大の声優ファンということもあり、かなり興奮していた。八重樫はそんな彰に、少し冷たい視線を送っていた。


SNSでの広報も行い、ファンの期待度が高まったなか迎えた販売日。


2/10(木)


彰は早起きをし、いつもより早く身支度を済ませた。


それもそのはずだ。


今日はクリエイターにとって最も楽しみな日である自分が企画したゲームの発売日だからだ。クリエイターが一番報われる日。自分たちの努力の結晶がようやくプレイヤーのもとに届く日なのだ。


なので、彰は普段以上にハイテンションな気持ちで部屋を出た。


彰のもとには会社からディスクが一部支給されていたが、彰もオタクなので、わざわざ購入しに行くのにはわけがあった。


それは、初回特典版を手にすることだった。

初回特典版には、イラスト集がセットになっていたため、彰はそれをコレクションしたい一心で、わざわざ朝早くから家を出た。


電車に乗り、初回限定版を発売する秋葉原へ向かった。


電車を降り、気分良く歩いていると、ゲームショップの前にはすでに列ができているのが遠目から見てもわかった。


その列に向かって彰が歩いている最中だった。



“グサッ”



彰の身体になにかが刺さり、一気に身体から力が抜けていくのがわかった。


この感覚...


そう、過去に刺されたときと同じ感覚だった。


しばらくすると、彰は腹部を押さえながら、膝から崩れる。

服を血の赤黒さがみるみる浸食していき、それに伴って、痛みも全身に巡っていく。


周囲からは悲鳴が飛び交う。


彰は仰向けで倒れてしまった。

すると、血がポタポタと滴る包丁を握った女の子が視界に入った。


彰は目が合って気付いた。それがエマだということに。

そして、彰の意識が薄れゆくの中、エマがしゃべり出した。


「ねぇ、彰。私、まだ彰のこと愛してるよ... だからさ、こんな世界捨てて、もう一度あの異世界で私と一緒にやりなおそうよ。だから、少しの間、痛いのは我慢しててね。もうすぐ楽になるから。」


すると、エマは高々と声を上げながら笑い出す。

彰の意識と、痛覚はほとんどなくなってきた。


「待っててね。すぐに行くからね。」


エマは、そう言うと、狂気の笑みを浮かべた。

そして彼女の喉に包丁を刺したのであった。


エマの喉元から飛び散る血を浴びながら、彰も意識を失った。



《完》



:あとがき:


ここまで、あるごのおとの応援をしていただきありがとうございました!なんだか少し嫌な終わり方にしてしまって申し訳ございません。1部としてはここで一応完結させていただこうと思います。今後の展望としては、まだ先のことにはなりますが、彰が作ったゲームである、Vertical Memoriesのシナリオ(彰の異世界での話)をラノベとして投稿したり、今作の2部を書いていこうと思います。


今作が少しでも面白いと感じてくださった方がいらっしゃれば、★評価していただけますと幸いです。感想等も、お待ちしております!


今後もあるごのおとの応援よろしくお願いいたします!

そして、最後まで読んでいただきありがとうございました!!


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異世界帰りのサラリーマンは恋ができない? あるごのおと @Nabaccha

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