赤緑のカップ麺
織風 羊
第1話
赤緑のカップ麺
一人の浪人生が夜食を食べに台所へ、2階の勉強部屋から降りてきた。彼の父親は、大学で物理学を教えている。その為、自宅に帰っても書斎に籠り物理の法則を研究している。そういう事なので、夜中に台所で出会うことは珍しくも無い。父親は、既にカップ麺にお湯を注いでいる。夜食には、例えカップ麺であってもラーメンはキツいのであろう、大概が蕎麦かうどんである。
息子はといえば二つのカップ麺を食卓に並べ、じっと睨んでいる。
「どうした? どちらにしようか悩んでいるのか? それとも、まさか二つとも食べようと思っているんじゃないだろうな?」
と父親が言うと、息子は暫くして思案顔で言う。
「どうして赤い狐と緑の狸なんだろう?」
すると父親も言う。
「それもそうだなぁ、薄揚げの乗ったうどんに、天麩羅の乗った蕎麦、だよなぁ」
そして息子は相変わらずの思案顔で二つのカップ麺をお湯も入れずに勉強部屋へ持っていく。
勉強部屋で高校物理の勉強をしていると、父親の専門の量子物理学が頭を掠める。
「波動方程式かぁ、でもこれってハミルトニアンの時系列の変化が必要だったよなぁ、例えば、カップ麺にお湯を注いでからと3分後の麺の変化を計測したら、シュレイディンガーの波動方程式が成立するのかなぁ」
などと受験勉強とは全く関係のない方向へ思考が向いているお馬鹿な浪人生であった。
すると、何かに気がついた様に二つのカップ麺の蓋を開けて、上に乗っている具材を交換した。
「よし! 共鳴したぞ! 天麩羅うどんに、薄揚げ蕎麦の完成だ」
彼なりの波動共鳴が成立した深夜であった。
赤緑のカップ麺 織風 羊 @orikaze
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
食べる物に捨てる物などない!/織風 羊
★275 エッセイ・ノンフィクション 連載中 73話
晴れの日と雨の日と思い空/織風 羊
★148 エッセイ・ノンフィクション 連載中 106話
ネクスト掲載小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます