事故物件に住む幽霊との闘い
昆布 海胆
事故物件に住む幽霊との闘い
どたどたどたどた・・・
「はぁ・・・またか・・・」
ここは俺の借りた木造2階建ての一軒家、なんと家賃月2万円と言う破格な値段で俺はここに住んでいる。
何故こんなに安いのか?
それは・・・あれだ・・・
たんったんったんったん・・・
階段を駆け上がる足音、しかしこの家には現在俺しかいない。
そう、ここは事故物件なのだ。
「はぁ・・・せめてもうちょっと静かだったらいいんだけどな・・・」
きぃ・・・ばたん!
2階の何処かの部屋のドアが開きその中に入ったのであろう。
霊だというのにイチイチドアを開けて閉めてくれるのだ。
その他にも留守番電話を勝手に再生したり、蛇口を開いて水を出しっぱなしにしたりしてくるのだこの霊は・・・
「くっそアレさえ居なければ本当快適な筈なんだがな・・・」
お祓いでも頼んでみようかと思ったりもするが、神社に頼んで一体どれくらいの金額が掛かるのかも分からず俺は行動に出る事が出来なかった・・・
でも足音がするのと変な事が起こるくらいで実害はそれほど大きくは無いのが現状・・・
俺が我慢すれば安くここで暮らせるという事はやはり大きかった。
しかし・・・
どたーん!
「な、なんだ?!」
大きな物音に驚き俺は二階へ駆け上がった。
そして、書斎のドアを開けて俺は唖然とした・・・
そこに設置されていた本棚が倒されていたのだ。
俺のエロ本コレクションが並んだ本棚が・・・
中には初回限定版のドラマCD付きのエロ漫画なんかも在ったのだが、見事に割れて再生不可能になっていた・・・
「ちくしょう・・・」
俺の怒りが有頂天に達し俺は霊に復讐を決意した!
2週間後・・・
作戦を練りに練ってこの霊の行動パターンを把握した俺は遂に実行に移す・・・
「そろそろだな・・・」
午後6時、いつもこのくらいの時間になるとこの家にいる霊は廊下を走る足音が突然階段を駆け上がる音に変わるのだ。
だから俺は階段の上で影に身を潜めていた。
そして・・・
たんったんったんったんっ・・・
階段を駆け上がる足音、家の階段の段数を把握して言う俺はタイミングを見計らう・・・
今だ!!
「うぇーい!!!!!」パーーーーーン!!!!
残り1段に差し掛かったであろうタイミングで俺は階段前に飛び出し、手にしていたクラッカーを鳴らした!
破裂したクラッカーの先端からはリボンや細かな銀紙が飛び出す!
そして・・・
どたん、どた・・・どた・・・どた・・・どたん・・・
階段を転げ落ちる様な音が響いた・・・
今までに聞いた事の無いその音に一瞬俺は不安になる・・・
だって霊だぜ?まさか驚かせたら階段を落ちるなんて思わないじゃないか・・・
こうしてこの日、霊の足音がそれ以降聞こえる事は無かった・・・
その夜。
夕飯を食べ終えた俺は風呂に入る前にトイレに行こうと食卓を立った。
その時である・・・
どたどたどたどた・・・きぃ・・・ばたんっ!
いきなり響いた足音、そしてドアを開いて閉める音が響いた。
今までの様な2階から聞こえる音では無く、今の音は1階から間違いなく聞こえていた。
それはつまり・・・
がちゃ・・・がちゃがちゃがちゃがちゃ・・・
「お・・・おぃ・・・嘘だろ・・・」
俺はドアノブを回して引いても開かないトイレを前に冷や汗がどっと出てきた。
まさかあの霊、驚かされた仕返しにトイレを占拠しやがったのだ!?
「おいこらてめぇ!ふざけんなよ!?」
俺はドアに向かって怒鳴り声を上げる、だがドアは開く事も無くノックしようが声を上げようが返事は帰ってこなかった。
自宅に居るのにトイレが使えない、これほど酷い事は無いだろう。
流石にこれは俺も怒りが臨界突破である・・・
「いいぜいいぜ、そっちがその気ならやってやんよ!」
そう言い俺は台所からそれを持ってきた。
布製のガムテープである、それを使って俺はトイレのドアを二度と開かないようにガムテープで封印していく・・・
通常のガムテープと違い、布製のガムテープは割高だが上から更に貼り付ける事が出来るのだ。
結果、トイレに引きこもった霊を外に出れないように俺は完全にトイレを封鎖した。
幸いだったのは2階にも1つトイレがあるので、今後このトイレは封印して2階のトイレを使う事に決めたのであった・・・
3日後・・・
「はぁやれやれ、本当静かになって良かったよ」
あれ以降廊下を走る音や、ドアが開く音等、霊が鳴らしていたと思われる音が一切聞こえなくなっていた。
たまに1階のトイレのドアを引っ掻くような音や叩く音が聞こえる様な気もするが、俺は気にせずに生活を続けていた。
俺は勝利したのだと確信をもって平穏な日常を満喫するのであった・・・
翌月・・・
「ふんふんふ~ん・・・ん?・・・んんんん?!」
俺は郵便受けから取ってきた封筒を開けて目を疑った。
先月の水道料金が20万円を超えていたのだ!?
庭にホースから水が出しっぱなしになっているわけでもなくこの金額はおかしい、水道局に問い合わせをしようと考えたのだが・・・
俺の脳裏に一つの可能性が浮上した・・・
「ま・・・まさか・・・」
恐る恐る封印された1階のトイレのドアに耳を当てると・・・
じゃーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー・・・
その音で俺は悟った・・・
あの糞幽霊、閉じ込められた仕返しに水を流しっぱなしにしてやがった?!
こうして今日もまた俺と霊の戦いは続くのであった・・・
終
事故物件に住む幽霊との闘い 昆布 海胆 @onimix
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます