第二話 襲撃作戦前会議
二 襲撃作戦前会議
最近勢力を伸ばしていると噂されている組織「ロンス」。あそこは俺らの組織にとって絶対的敵関係である。何故かというと、ロンスは裏社会をまとめている機関「ヴェルゲノム」の会長、柊猶二の実の息子がロンスのボス、柊玲緒だからというのもあるのだが、もう一つの理由としては、昔まだロンスが出来ていない時、柊玲緒は此方の組織にいた。
しかし、組織に貢献していたかと思えば裏で新しい組織を作るための準備と此処の組織を陥れる為の証拠集めをしていたらしい。その証拠たちを会長に見せられたらたまったものではない。最悪この組織は終わる。その前にこいつは潰しておきたいと組織内の人間同士で話し合い、ロンスを襲撃するという計画へとなった。彼らはこの時を待ち望んでいたかのように計画を進めていた。
「…最近の傾向はどうだ?」
「はい、順調に進めております」
「そうか、そのまま続けてくれ」
「承知いたしました」
「あと少しで…あと少しで奴に手が届く…」
首洗って待ってろ、と小さく呟く。窓の奥から見える丸く輝く満月が彼を見つめていた。
三大マフィアと呼ばれる前、つまりまだロンスが出来ていない頃、裏社会はヴェルゲノム率いる二大マフィアと呼ばれていた。それが『ライド』と『グラン』だった。どちらとも異能中心のメンバーでお互いの面識もありそれなりの年月共に任務をクリアしてきた仲間と言っていい程、互いを信頼している。今もこの関係は続いている。また、今回の襲撃に対しても協力してもらっている。共同襲撃をしてロンスを消す目的で。
「今週末にグランと会議をする。準備しておけ」
「かしこまりました、ボス」
グランとの会議の前に標的であるロンスの情報を掴まなければならない。しかし相手も相手な為、情報を漏らすという事はあまりないだろう。しかし、一つ分かっていることは柊は人質に弱いという事、それは今も昔も変わらないだろう。ロンスの人間から誰かしらを買収したりして此方側の人質となってもらい柊をつぶすのが計画の一つだが早々うまくいかないだろうと自分たちは思っている。向こうも向こうでファミリーを裏切る行為はできないだろう。しかしロンスの人間の殆どはただの素人と聞く。なら、あちら側よりこちら側の方の条件が良ければ来る可能性は十分にある。その為にはまず、ロンスの人間との接触が必要となってくる。気が弱そうな人間を見繕い声を掛けていく。幸いなことにライドとロンスのアジトは結構近いところにある。向こうのアジトから出ていく人を観察しながら声を掛けてみよう。
荷物を自室に置き、元の部屋の片づけをしようとアジトを出る。斜め後ろとその上にいる…。しかし奴らではないことは確かだ。なら何の用なのか、それとも私ではなく違う誰かを待ち伏せしているのか。取り敢えず知らないフリをしてみようかと道を歩く。しかし後ろにいる奴らは少し経つと此方に近付いてきた。やはり私なのか…。
屋根の上でロンスのメンバーを待ち伏せしていると一人の女が出てきた。いや、見た目はただのガキにしか見えんが本当にロンスのメンバーなのだろうか。彼女が進むと少し時間が経ってから女の後を追うことにした。
「…なぁ、ねーちゃん。ちょっと話良いかな?」
女は一度は無視したがもう一度言うと振り向いた。見た目はただの女のガキ。もしかしたらロンスの組員かもしれないから一様声を掛けてみる。
「…私に何か御用でしょうか?ご用件があるならお早めに…」
「そんな焦るなって、君さ…この近くにロンスっていうマフィアの組織知らない?」
「…まぁ、聞いたことありますね」
「聞いたことある‥君一般人?…じゃあ何で今あそこから出てきたの?あそこの場所を知っていてのこと…?」
女は数秒黙った後口を開く。
「もし、私がそのロンスの人間なら…どうするのですか?この場で殺しますか?」
「いや?ちょっと協力してほしいんだよ」
「協力?」
「そう、協力、簡単なことさ。君が此方の組織に来てくれればいいんだよ」
女は何を言っているのという顔をしている。
「来ない?」
「行くわけないでしょう?では失礼します」
待って、という言葉が出る前に女はとっとと歩いていった。
そういわれた瞬間、腹の中から何が湧き出た。怒りだろうか。腹立たしいの他に絶対に奪ってやりたいという言葉が浮かんできた。俺の誘いに断った奴はアイツ以外見たことがなかったからだろう。歩き去っていく女の後ろ姿を見ながら俺はこう小さく呟いていた。
「必ずこちらに引きずり込んでやる…」
知らない組織に協力するなどガキ以下でも裏切り行為だということはわかっているはずだ。なのに何故こちらに協力を要したのだろうか。何かの任務で困難に陥っているのだろうか。しかしその状況だったらボスから連絡が来るはずだが来ずにそのまま私に伝えることだろうか。それとも別の案件でロンスに協力してほしいことでもあるのだろうか。いや、色々考えていても仕方がない。まずはボスに相談してみよう。何かわかるかもしれない。
「ここと敵対している組織はどこかって?」
「はい、どこか心当たりはありませんか?」
永月は先程の出来事を柊に報告ついでに聞いてみた。
「ここと敵対しているというかそのような組織はいくらでもある。どこかで恨みを買っている場合もある。それを重々承知の上でこの世界は成り立っているんだよ」
「それは…そうですけど」
「だが、俺の大切な仲間を奪おうなど肝が据わっている奴もいるんだな」
少し考えた素振りをして柊が口を開いた。
「少し話をしたい、十分後に皆を会議室に収集してくれ」
「承知いたしました」
永夜に咲く紅の華 黒埜怜依 @noraui
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