第24話
時は少し遡り、杉本先生だけ教室へと入った時のことである。
「よーし、朝のHR始めるぞ〜。休んでるやつは手を挙げろ〜。はいおっけー休みゼロね」
「先生!」
「どうした、佐藤」
佐藤と呼ばれた快活そうな男子生徒は立ち上がると同時に言った。
「教室に机が一個増えてるんだけど、これってもしかしてそういうことなんすか?」
「ふっふ〜。お目が高いな佐藤くんや」
その途端一気に教室全体のテンションが上がる。
各々が近くの席同士でどんな人だろう?男?女?などと会話が膨らむ。
「はい、静かに〜」
手を叩いて注目を集めつつ、騒いでいた教室をピタリと黙らせる。
一応変人であることに変わりはないが、この人も教師なのである。
「とりあえず今から入ってもらうが、お前たち腰抜かすんじゃねーぞ?」
生徒たちは首を傾げ、頭上に?を浮かべる。
「それではどうぞ!」
仰々しく身振りをつけながら、扉に注目するよう杉本先生は促した。
そして時は戻る。
俺は緊張しながらも、覚悟を決めて扉に手をかける。
転校というのは初めての経験であり、こういったシチュエーションは漫画などの創作物でしか見たことがない。
逆に運が良いのか悪いのか、自分がこれまで小学校から以前いた高校まで、クラスに転校生が来たことすらなかったのだ。
ここから先は全てが未知である。
しかしこの学校でこれから過ごしていく以上、今さらビビってなんかいられない。
半分ヤケクソになりながら俺は教室へと入った。
そして入った瞬間感じる大量の視線。
そして何故か分からないがこれは息を呑む音?
思わず萎縮し、足が止まりそうになるが、そうも言ってられない。
とりあえず杉本先生の隣あたりまで歩く。
「くっくっ。よし、じゃあ黒板に名前書いて自己紹介してくれヨ」
「あ、はい」
緊張して手が震えるせいで、お世辞にも綺麗とは言い難い字になってしまったが、これは仕方ないだろう。
そして教室を軽く見回し、軽く深呼吸してから自己紹介を始めた。
「風間慎二です。ちょっとした家庭の事情でこの学校に転入してくることになりました。部活はサッカー部に入ろうと思ってます。よろしくお願いします」
さっき軽く決めておいた無難な自己紹介を完遂し、頭を下げる。
本来ここらでちょっとくらいは拍手してもらえると思っていたのだが、教室は静まり返っている。
「くっく。ほらお前たちいつまで惚けてるんだ?こういった時は拍手だろ、拍手」
そう言って隣で杉本先生が拍手を始めた。
するとそれに釣られたのか徐々に拍手が大きくなり始めた。
なんだか失敗のような気もするが、終わってしまったことは仕方ない。
家に帰ったら1人でこっそり後悔しておこう……。
「じゃあ風間は1番窓側の1番後ろの空いてる席に座ってくれ」
「あ、わかりました」
とりあえず杉本先生に指示された席へと向かう。
未だ大量の視線を感じるが、これが顔面偏差値30の転入生の宿命なのだろう。
甘んじて受け入れるしかない。
そして指示された席の目の前まで来た時、隣の席に座っている女子と目が合った。
彼女は黒髪のポニーテールのとてつもないレベルの美少女だった。
しかし容姿ではなく、俺は彼女の少し物憂げな眼差しに心の中で何か引っかかるような違和感を覚えていた。
従姉妹に顔面偏差値30と言われた俺だけど、何故か休み時間の度に学校の美少女達が囲んでくる【リメイク版】 ごま塩アザラシ @zeo_19390503
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