SS カイン・キャンベラス
俺の名はカイン・キャンベラス。
このアルトヴェール王国の王子だ。
俺の父上は、ロイン・キャンベラスといって、もちろんアルトヴェール王国の王様だ。
そして、父上は王様であるだけじゃなく、最強の勇者でもある。
俺が生まれるよりももっと前、父上は魔界に行って、魔王を倒し、この世界に平和をもたらしたらしい。
そんな英雄ロインの息子に産まれて、俺は正直、荷が重いと感じることもあった。
みんな俺のことを期待のまなざしで見てくるし、父上は偉大すぎて、近寄りがたい。
だけど、父上は俺にはとってもやさしくしてくれる。
強くて優しい、憧れの存在だ。
俺には姉が二人いる。
姉は俺のことを溺愛していて、正直困っているくらいだ。
この歳になっても一緒に寝ようとかいってくるし、お風呂にだってついてくる。
兄弟とはいえ、腹違いなんだし、その辺は遠慮してほしいよなぁ……。
俺もはやく大きくなって、父上みたいな冒険者になりたい。
そんな俺は、幼いころから、剣と魔法の特訓をしていた。
俺は将来、アルトヴェール王国を継がなくてはいけないらしい。
だから王様としてみんなを守れるくらい強くならないといけない。
そんな俺の剣の特訓をみてくれているのは、俺の師匠であるアレスターさんだ。
アレスターさんはアルトヴェール王国の将軍でもある、偉大な人だ。
父上の友人でもあり、いっしょに魔界に渡って、魔王討伐に加わったメンバーでもあるらしい。
そんなアレスターさんは、俺に厳しくもやさしく、剣を教えてくれる。
「カイン様、お強くなられましたな……」
「でしょ!? じゃあそろそろ、一人で冒険いっていい!?」
「それはダメです……。お母上からとめられております。カイン様はまだ子供、それに一国の王子でもあります。お一人で外出などさせられません」
「っち……はやく魔物と戦ってみたいのにな……」
そのときだった。
城の庭の柵を飛び越えて、一匹のイノシシ魔物がこちらへ向かってくる。
――ドドドドドドドドド!!!!
「カイン様……! 危ない! ここは私が……!」
だけど、俺はアレスターさんを押しのけて、魔物の前に立ちはだかる。
せっかく魔物が向こうからやってきたんだから、俺が仕留めたい。
俺だって、もう一人前にやれるんだ……!
「俺にまかせて!」
「カインさま……!」
俺はイノシシ魔物を一刀両断――!
――ズシャアア!!!!
なんてことはない相手だった。
だけど、アレスターは血相を変えて俺に駆け寄ってくる。
「カイン様……お怪我はありませんか!?」
「うん、大丈夫」
「まったく……今後はこのような場合はお逃げください。もしカイン様になにかあったら……私は……」
「平気だって、このくらい」
「おや? カイン様、それは……?」
「うん?」
すると、アレスターは魔物の死体を指さした。
なんとそこには、ドロップアイテムが落ちていたのだった。
「おお……! これはイノシシのレアドロップアイテムですな。綺麗な宝石です」
「これが……レアドロップ……」
「初めての魔物討伐でレアドロップが出るなんて、運がいい。さすがはロイン様のご子息ですな」
「父上……」
俺の父上には、特別な力があったらしい。
それは【確定レアドロップ】の力。
どんな魔物を倒しても、必ずレアドロップが得られるというものだ。
「もしかしたら、カイン様にもその力が受け継がれているのかもしれませんな」
「……そうか、俺にも……」
俺は、大事にそのレアドロップアイテムをポケットにしまった。
これは、宝物にしよう。
【WEB版】俺だけ《確定レアドロップ》だった件~スライムすら倒せない無能と罵られ追放されたけど、初めて倒した一匹から強武器落ちました~ 月ノみんと@世界樹1巻発売中 @MintoTsukino
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