まさに地獄巡りの名にふさわしい血と暴力

 なんだか妙に苛立っている男と、その彼に暴力を振るわれながらも涼しい顔をしているもうひとりの男の、旅の一幕のお話。

 伝奇な雰囲気漂う現代ファンタジーです。
 ちょっと普通ではない男たちが出てきて、やはり普通じゃない事件に挑む物語。

 特筆すべきはやはりそのハードコアさ加減。
 血と暴力が満載、というだけでなく、それがしっかり生々しく痛そうなところが最高でした。
 単に鼻をへし折られるのみならず、その後にしっかり血で汚れたワイシャツの描写があるなど、ひとつひとつをなおざりにしないからこその臨場感。この辺、読んでいて気持ちがいいのがたまりません。

 なにより、その世界観に合致した文章がなお魅力的。
 短く飾り気のない描写で語られる、このふたり独特の関係性や距離感のようなものの。硬派で硬質な色香のようなものが、その行動や仕草から伝わるところが嬉しい作品でした。