瑞々しい青春の旅路に、でもほのかに漂ううら寂しさ

 とある日の明け方前、突発的に海へと向かうことになった、男子中学生ふたりの恋と青春の物語。

 澄み切った空気感が魅力の、現代もののボーイズラブです。
 幼なじみ同士が自転車にふたり乗りして海へと向かう物語。この筋から想起される印象の通り、とにかく青春ものらしい瑞々しさが満載のお話でした。眩しい!

 とはいえ、決してキラキラした幸せな物語ではないところが好きです。
 もっというなら、それが物語の端々にうっすら示されているところが好き。例えば、もうタイトルからして「失恋の」だったりするところとか。
 思春期年代らしい爽やかな雰囲気の中、でも確実に滲み寄る〝何か〟の気配のようなものが、読んでいてじわじわ効いてくる感覚がたまりません。

 幼なじみらしいふたりの関係性、それが丁寧に描かれているところも素敵。青春の瑞々しさと、そこに影を刺すほの切なさのようなものが魅力的なお話でした。