告白前提の温泉旅行

 十九歳の幼なじみ同士の男ふたりが、バイクで温泉旅行へと赴き、そこで告白したりされたりするお話。

 現代もののボーイズラブ、それも直球の恋愛劇です。
 視点保持者である男性(『俺』)と、その彼に密かな想いを寄せる長髪の幼なじみ(『こいつ』)のお話。ただし秘めたはずのその思いは半ば丸見えというか、「この旅自体が告白のためのもの」ということすら見透かされている、というのが特徴的です。
 話が早いというか、いわゆる惚れた腫れたの部分は初めから前提としてあって、その先の関係性にのみ集中している物語。

 距離が近すぎるがゆえにいろんなものが見えてしまい、結果として互いが互いの何かを待つような状態になるというか、何か初々しい探り合いみたいな空気感が独特です。
 安定してしまった友人関係から、それを壊すリスクをとってでもその先へと進みたいと願う、その緊張と不安のようなもの。
 まさに恋のお話! という感触の作品でした。ズババーっと流れていくような独特の文体が好きです。