いろいろどうしようもないどん詰まりの旅

 消失した実家と両親の後片付けに来た青年が、幼なじみの男と再会したことから始まる物語。

 シビアな現実の光景を描いた現代ドラマです。また同時に、幼なじみ同士の関係を描いたボーイズラブでもあるお話。

 面白かった……! とにかく読んでいて楽しいというか、いや「楽しい」なんて言葉のそぐわないズタボロの現実がみっちり詰まったお話なのですけれど、それがいちいち胸に響くのだから途轍もない。
 彼らを取り巻くさまざまな(そして悲惨な)現実の、そのディティールなり描かれ方なりが、読んでいて本当に気持ちいいのがたまりません。
 何か〝物語〟の成分が、バカスカ胸の中に積もっていくようなこの読み心地!

 内容に関しては、正直ネタバレが怖いので具体的には触れないのですけど、とにかく話運びが最高でした。
 静かに淡々と綴られた物語なのに、どうして読んでいてこうも気分が盛り上がるのか? 特に終盤なんかもうずっと悶えっぱなしでした。特に結び。最高。大好き。

 あとこれはどちらかというと枝葉だと思うんですけど、BL成分の匙加減が好きです。
 明らかに恋愛的な好意の絡む物語で、はっきりBLとしての魅力はあるのですけれど、BL的なお約束には依拠しない感じのバランス。性的な描写などもなく、つまり非常に読みやすい作品だと思います。BLが好きでもそうでなくでも、たぶん飲み込めちゃう間口の広さのあるお話。すごい。

 最高でした。個人的に「仲のいいおじさん」が好きです。人物としても好きなんですけど、ただ話題として登場するだけでこんなに物語がピリッと引き締まる人間いる?! とても面白かったです。おすすめ!