第13話 妹視点 哀れな兄


――ドドド――バーンっ


結花「お兄ちゃんー起きて!!て!起きてる珍しい!!」


いつも通り自分の身支度を済ませてお兄ちゃんの部屋に入ると珍しくお兄ちゃんは起きていた。気持ち悪い偽妹アラーム音も鳴ってない……。かけ忘れただけかもしれないけど……。


蓮「いま起きたんだよおはよう結花……」


お兄ちゃんはボサホザの頭を掻きながらそう答える。本当にお兄ちゃんは見た目だけなら完璧なのになと思いながら


結花「はーい今日もお弁当作るからね昨日はパセリ美味しく食べてくれてたってツッキーから連絡きてたよっ」

よかったよかったと綺麗に一つずつミキサーでサプリを砕いて、虹色にデコレーションした自信作のことを思い出しながらお兄ちゃんに伝える。ツッキーからもRainで確認済みだ。


蓮「もうお弁当はいいかな?売店で食べるからさ」

するとお兄ちゃんは不健康なものしか置いてなさそうな(偏見)で食べるから大丈夫て言ってくる。ご飯をずっと食べてなくてお粥でも戻してた兄が……


結花「うん?何か言った?」

私は入り口のすぐ横に置いてある抱き枕の頭を掴む。お兄ちゃんは言っても変なこと言って逃げるから目で解らせないとね……。


蓮「それ……限定の雪見ちゃん抱き枕……」


そんな声が聞こえるがお兄ちゃんに見えるように頭を掴みボディブローをする。なんか柔らかくて癖になるかも……。


(ドス‥ドス‥ドス)


結花「美味しいんだよね?」

(ドス‥ドス‥ドス)と抱き枕の柔らかさを手に感じつつお兄ちゃんは段々表情が焦ってるのがわかる。


蓮「兄として言わなきゃいけないことがあるんだ結花落ち着いて聞いてくれ、そして雪見ちゃんを殴らないで……」

兄として……?もしかして感謝の言葉とか?

妹として見れないとか……とか妄想に少しふけりつつお兄ちゃんに聞き返す


結花「なに?お兄ちゃん?」


蓮「あれは人が食べるものじゃないんだ虹色のお茶も、プロテイン付き卵もパセリも……」

人が食べるものじゃない……それはない!サプリメントの料理方法ネットで調べてこれで体が無敵になるて書いてあるレシピ改良して頑張ってデコレーションしたのに!


結花「えー!まだ残ってるんだよ材料、卵はいいとしてお茶どうするの?」


蓮「そっちが問題なんだけど、兄として妹の今後彼氏になる人が心配だよ……」

いきなり彼氏とか言ってくるのキモイ!て昔なら言ってたけど……今は違う……

お兄ちゃんがいなくなった後の寂しい家……これからもう目を覚まさないんじゃないかって恐怖……反抗期が終わっても……毎日アニメを見て……無理にカッコつけてるけど構ってくれるお兄ちゃんがいない日常……。

自分が兄に甘えて、アニメ好きだから、野球から逃げたって変に嫌ってたことに気づいた今、キモイという言葉は出なかった。


結花「大丈夫!彼氏作る予定ないし!今は友達と楽しくやってるからっそれに……‥

当分はお兄ちゃんのお世話するんだ!またいつ倒れるか分からないから!」


今はやっと学校でシャーロットちゃんとも仲良くなったし今年受験あるけど……できる限りはお兄ちゃんに尽くしたい。


蓮「いつまでもとは行かないだろうに」


その言葉は確かに耳に聞こえていたけど……いつまでもとはいかないけど……今しばらくはと思って立ち尽くしているとお兄ちゃんの口が開き真剣な顔で


蓮「結花よ……妹様よ」


結花「なに?お兄ちゃん気持ち悪いよ改まって」


さっき我慢してたけど言い直した妹様という言葉にゾワっとし気持ち悪いと昔の口癖の言葉が出てしまう。


蓮「俺高校では彼女作ってお弁当作ってもらおうと思ってるからもう作らなくて大丈夫だ」


何かと思って聞いてみると……そんなことを口に出してはいるが部屋を見渡すと部屋一面には所狭しと貼られた二次元の女の子の壁紙、ガラスケースには大量のフィギュア、巻物みたいに積み重なっているタペストリー、床には散乱したいくつもの抱き枕、3段ボックスには漫画本、ゲームが所狭しと並んでる中で真剣にそんなことを言うお兄ちゃんが、余りに場違いな発言で思わず頬が緩む。


結花「ぷぷぷっキモオタのお兄ちゃんに彼女できると思ってるの?そんなの無理だよ?」


結花「でもどうしてもて言うなら1ヶ月ううんっ1週間でどう?自信あるなら作れるよね?彼女さん作るだけでいいよお弁当いきなりじゃね……」

最初1ヶ月て言おうと思ったけど1週間ていう無理難題を出す……出来なかったらこのお部屋掃除しようと周りを見渡して


蓮「あぁ……あの結花さん?女子からお弁当作ってもらうてだけじゃダメ?」

弱腰になりお兄ちゃんが聞いてくる。ふと手から離れた抱き枕を見つめる……

お兄ちゃん学校のこと話してくれないけど……もしかして友達いないんじゃないのかな……軍曹とか課長とかよく電話で話してるの聞こえるけど……その人たちももしかしたら……いないんじゃ……いたとしても高校生じゃないよね。

そんな悲しいことになってるお兄ちゃんになんて酷いことをと思い直す。


結花「……1ヶ月以上継続してならいいよ?でもコンビニのお弁当とかじゃダメだからね?」

お兄ちゃんハードル高いけど……無理しないでとりあえずクラスの人とお話しするところからだろうな……だから1週間じゃなくてもいいし……一緒に食べれるだけでも……


蓮「それでお願いするだからとりあえずな?」 


お願いしてくるお兄ちゃんがさらに哀れに見える……


結花「まぁそれでいいよ……でもね!お兄ちゃん別に無理やり彼女作らなくてもいいからね?友達いっぱい作って楽しく学校通ってね?」



蓮「あ、ありがとう結花……」


泣きそうな顔をしているお兄ちゃんを見て

頑張って無理しないでねお兄ちゃん……と心の中で声援を送った。

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夢見渡り 獏と過ごす高校生活 ゴリラつらみ @j55f3b

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