第8話(最終話)
大きい猫さんが会いに来てくれた。それだけでも嬉しいのに一緒においでと言われ、私は嬉しくて涙が溢れてきました。
「ふぅ、うっ…ふぇええぇん…」
心配そうにオロオロしている大きい猫さんと秘書さんの姿が見えましたが、涙は止まりません。気が付けば私は空を見上げて大声で泣き出していました。
夕立の日は悪いことばかり起こり嫌いでした。夕立が私から大事な物を奪って行くようで、夕立を見る度に心が重くなり、いつしか憎むようになっていました。こんなの逆恨みですよね…ゴメンナサイ…
本当は夕立のせいじゃないとわかっていたんです、でも自分の不運を何かのせいにしないといられなかったんです…
夕立さん、これからはもう嫌いません。ちゃんと目を開けて、目の前の
私は止めどなく溢れてくる涙を手で拭いました。すると次の瞬間、夕立の雨が止んで雲の切れ目からパアッと日の光が差し込んできました。そして綺麗な大きな虹が空にかかったのです。
すると、不思議なことが起こりました。急に、大きい猫さんが『スーツを着た優し気なオジサンの姿』に見えたのです。
頭にはふさふさの猫耳のカチューシャを付け、スーツのお尻にも猫の尻尾が付いています。
「えっ!? あれ…!?」
一体どうしたんでしょう!? どこからどう見ても人間に見えます。大きい猫さんではなく、『大きい猫耳を付けたオジサン』です!?。
「こちらが社長との養子縁組の書類です。社長は
私が差し出された手を取らないのを、躊躇していると思ったのでしょう。秘書さんが私に優しく話かけ書類を手渡してくれました。
どんな姿に見えても、私が『大きい猫さん』を大好きなことに変わりはありません。
「私も…一緒に暮らしたいです…もう、離れたくないです!」
私はようやく差し出されたその手を取りました。
すると大きい猫耳を付けたオジサンは顔をくしゃとさせて、とても優しい笑顔で私に微笑んでくれました。
小さい猫さんを抱えた私を、大きい猫耳を付けたオジサンが手を引いて黒塗りの車に乗せてくれました。普通の車より車体が長いです。リムジンというそうです。
「社長、今回のことは俺がいろいろ先回りして児童相談所や警察に手回ししたおかげですからね。もっと俺に感謝してくださいね」
秘書さんは、眼鏡を神経質そうにカチャリと指で持ち上げてぼやきました。
「うんうん、感謝してるよ
大きい猫耳を付けたオジサンがニコニコの笑顔で、秘書さんにお礼を言い頭をペコペコと下げました。
「おっ、お弁当ありがとう…ございました」
私も大きな声で、秘書さんにお礼を言い頭をペコペコと下げました。
こうして私は大きい猫耳を付けたオジサンと小さい猫さんと家族になり、大きなマンションのてっぺんの新しいお家で、末永く幸せに暮らしたのです。
大きい猫さんと小さい猫さんと私 にゃんこマスター @nyankomaster
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