地獄の底、無惨に灼け落ちる二輪の花

 ゾンビに襲われたドライアドの村、噛まれて感染してしまった女性と、その彼女を慕っていた少女の物語。

 異世界ファンタジーであり、また事実上の終末ものでもあるお話です。
 本作中に登場するゾンビは、いわゆる「ファンタジー世界の魔物」としてのそれではなく、個体から個体へと感染するタイプのゾンビで、そのもたらす絶望感の凄まじいこと!
 冒頭から相当なジリ貧感というか、もう壊滅する以外に考えられないところが最高でした。出だしでがっちり心を掴んでくれるお話の素晴らしさ。

 最大の魅力はやっぱりストーリー、というか、もう身も蓋もなくいうなら百合要素です。
 登場人物の抱えた想いの深さと、それを客観的に示す彼女らの行動や固めた覚悟など。
 どう足掻いても地獄に行き着くしかない状況の中、それでものたうつみたいに前に進もうとする、その姿勢の壮絶さがバリバリ胸に刺さりました。とてつもない……。

 また、それらが単に美しいばかりでなく、完全な自己の欲望のもとに行われている、というのがもう本当に大好き!
 トトリさんの行動は、まあ「自分の命を自分のために使っているだけ」と言えばそうなのですが、でも同時に仲間を見捨てる行為でもあったりする、という点。
 にもかかわらずそれを平然と、一切の迷いなく実行して、逆説的にそこから見える「そうさせうるほどの想い」がもう本当に最高……。
 たまらないあれやこれやがみっしり詰まった作品でした。あと中盤のエコ姉の悲鳴が好きです。生っぽさがすごい。