第6話

彼が亡くなったのは病院についてから10時間程したその日の夕方だった


私は病院にいると家族や親戚からの目が困るということで一度病院から帰ることとなった


会社の事務所が病院から1番近かった為、友人に付き添われ事務所でいつの間にか意識がなくなっていたらしい


首を絞められるような苦しさで起きた

友人が今黒い影が私のほうに入って行ったと言われ馬鹿な私は彼が来てくれたんだと喜んでいた

そのまま連れて行ってほしいと…


そのすぐ後に彼の親戚から電話があった

彼が息を引き取ったと


どこかで期待していた

まだ心臓が動いているなら奇跡はあるのかもしれないと


奇跡なんてあるわけもない

だって見つけた時点で心肺停止だったのだから

彼の心臓が少しでも動き出したこと

それがすでに奇跡だったのだから


すぐに病院に行き何故か私だけが病棟に呼ばれた

理由はすぐにわかった

検死

でも彼の顔が見れただけで泣き出す私を彼の母がとめる

「私の息子なの。あの子をこんなふうにしたのは全部私が悪いの。でもお母さんは泣いてないでしょ。泣いたらあの子が可哀想だから。だからあなたももう泣かないで。」


言われていることがよくわからない

彼は本当に死んだの?

警察から検死がまだなので彼に触ることも許されないまま私は警察にそのまま連れて行かれ事件性がないのかの確認をとると言われた


まず最初に私の身元確認と彼との繋がりを聞かれた

彼のマンションの駐車場で

その時点でもう過呼吸になってうまく話せなかった


彼は私に最後にラインを全部消してほしいと言ったけど私は嫌だと言った

警察に着信履歴とラインを全て見せてほしいと言われ素直に見せた


最後のラインに「死にたい」と何度も入っていた

それを見て警察はテンション高く文言確認!と叫んでいた

着信履歴もほぼ彼からのもので私からはない

最後の着信履歴から30分の通話があったと確認されその時点にいたコンビニの防犯カメラを調べると言われ好きにしてくださいと言った


私はたぶん不審に夜中にこのマンションの全ての階段をチェックしたことや彼を探して何度もマンションを出入りしたことを伝える


彼の部屋に入る前に過呼吸がひどくなっていた

その為、先に会社から調べると言われ会社へいく

会社は全てオートロックにしておいた

携帯で開けるので誰がいつ出入りしたのかもわかる

それも調べたければどうぞと伝えた


真っ暗な事務所に電気をつけた

彼のパソコンと携帯を警察に渡す

次から次へと写真を撮られる

あれ?私って殺人犯なんだ

と、何故か思ったらいきなり嘔吐した


「少しゆっくりして過呼吸もひどくなるから」

と、たぶん1番偉い警察官が椅子に座らせてくれた


一晩の流れと最近の彼の行動、通っていた心療内科や鬱の診断をうけていたことを話す


少し落ち着いてきたところで警察から言われた

「マンション行ける?お母さんもいるけど」

正直怖かった

でも彼のお母さんには謝らなきゃ

私がちゃんとみてれば

私があと10分はやければ


その後は車の中で『あと10分はやければ』とまたずっと呟いていたらしいがそこまでの記憶はない


マンションについた

さっきの警察官から「しんどかったら車で待っていても大丈夫だけどどうします?」と聞かれ謝らなければならないのでと答えた


誰に何を謝るの?

自分でもよくわからなくなっていた


部屋の前でも過呼吸になり中々一歩がでない

「どうする?」と聞かれ我にかえりドアを開けた


彼の部屋の匂いがした

昨日の夜まで一緒にいた匂い

奥に入ると彼の母が正座をして待っていた

私はまた床に頭をつけて謝った

『私があと10分早ければ』と泣きながら謝った

母親は何も言わないまま遠くをみていた


警察の質問は彼がどこで首を釣ったか

見つけた時の状況、そしてそこから私がどうしたのか?


彼の寝室のドアを開けた

見つけた時と同じ嘔吐物のと尿の匂い


そこからはちゃんと答えれたのかわからない

泣きながら言われたことに答える


そして私は警察につれられまた車に戻された


話したことのおさらいだ


何度私の記憶を掘り返したら気がするのだろう

『私が殺したようなものです。あと10分早ければ助かったかもしれないんです。私が遅かったから』

と話すと偉い警察官が

「かもしれないって言い出したらキリがないんですよ。あなたは助けようとしたそれは救急隊の人からも伺ってます。だから自分を責めないで下さい。」


彼を見つけてから初めて自分を責めるなと言われ驚いた


「私達も仕事です。あなたの疑いをはらすためにやっているんです。事件性がないと分かれば早く彼を家族に会わせてあげられるんですよ。」


そうなんだ

私が泣きわめいて話が進まなければ彼は家族に会えないんだ


やっと顔をあげた

もう一度全部話し直した

携帯は見たくないけど彼のラインと電話

そしてマンションの防犯カメラも調べてもらえばわかると伝えた


病院に戻り私と母親だけが病棟で警察の報告を待っていた

すぐに防犯カメラの写真と時間

私が救急隊を呼んだ時間などから考えても事件性はないと判断された


やっと彼を家族さんに返してあげれるそう思った

その時母親から「お願いがあるの。」と言われた

「霊安室には来ないでほしいの。」

事情はすぐに飲み込めた

まず私は彼がまだ別居中から付き合っていたこと

第一発見者であり色々思う人もいること

そして親戚に自殺だと知られたくないこと


私はわかりましたと答えたが

なら病棟にいる間だけ少しでいいので二人にさせてほしいと伝えると母親は少し悩んで了解してくれた


警察から検死も終わり事件性はないので彼に会っても良いと言われた

霊安室へ行くまでの間、少しだけ

彼はもう冷たかった

彼の顔も手も冷たかった

少し笑っているような気がした

もう声を聞くこともケンカすることもない

一緒に笑うこともご飯を食べることもない


涙はきっと枯れないんだろうなって思った

ズルズルとストレッチャーから崩れる私に母親は

「あなたには1番長く一緒にいされせてあげられたんだからもう返してあげて」と言われた


ストレッチャーにのりエレベーターの前でまつ

下には家族が待っているんだろう

「あとから降りてきてね」

私はエレベーターの前で1人泣きながら見送った



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正解を探せ ヒカリ @tamaki1009

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