第5話
彼の鬱がひどくなったのは1年程前からだった
ちょうど彼と付き合い始めた頃
彼にはまだ別居中の奥さんがいた
奥さんとの不仲、上手くいかない仕事
私には何も話さないまま明るく仕事できる彼とダメだと思いながら始まってしまった
その後、彼が離婚した
その頃には彼の鬱はどんどんひどくなっていた
奥さんもきっと耐えれなかったんだね
毎日のように続く明るく楽しそうな昼間と
死にたくなるような夜中
そして彼もどんどん私に依存してくるのがわかった
夜勤の夜も死にたいって電話
急いで帰ると普通にゲームをしている彼がいた
調子が悪い日は車に乗ることもできないから
病院の送り迎えはいつも私
そんな日が半年ほど続いていた
私も焦燥し始めていたのかもしれない
どうせ死ぬって言って一度もまともな自殺未遂はなかったからまたいつもの脅しなのかと思っていた
そしてあの日がきた
夜中の四時まで死にたいと喚き私も限界だった
『私の為に生きるってこの前約束したやん』
『嘘だったの?』
「でももう限界なの!お前のことも仕事もなんにも出来ないの!死にたいの!」
「どうせ俺がいなくてもお前はすぐ他にできる」
「俺なんて足手まといやん」
死にたいと繰り返す彼
これも毎回のこと泣きながら喚く
『わかった、ちょっと頭冷やして』
と私はコンビニまで車で行った
その間の通話履歴は10回程彼から鳴り続けていた
出てもケンカ
出なくても喚き散らす
コンビニで彼の好きなアイスを買った
そして部屋に戻ると彼は泣きながら怒鳴っていた
人は血糖値が上がると眠くなる
だから彼にアイスを食べさせてみようとした
いつもならここでアイスたべて寝てくれる
少しの期待
その日はムリだった
そしてまた部屋を出ていってしまう
鍵も持たないで
また探す
疲れた…
袋の中の溶けたアイスみたい
外に出せないけどもう元には戻らない
そんなアイスを冷凍庫にしまいまた探す
車に乗って近くのコンビニを回る
たぶん財布は持ってるだろうから
もしかしたらと
そしてまた着信の嵐
「お前どうせどっかの男と今あってんだろ?」
もうさすがにそれは言っちゃいけないと思った
これだけあなたを探してもうそろそろ明るい
『そんなに言うならLINE でもなんでもみたらいいよ。すぐ戻るから!』
それが彼とした最後の会話だった…
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