第2話 俺を見て五十嵐さん

 入学して一ヶ月。俺のC組は男女比も同じで、みんな和気藹々と過ごしているバランスの良いクラスだと思う。俺は隣の席の近江 要(おうみ かなめ)とよく過ごすようになっていた。近江は顔もそこそこ良いけど、それよりもムードメーカー的存在で人気者だ。完全なる陽キャで、よく他愛もないことで話しかけてくれる。だが隣の近江よりも、後ろにいる五十嵐さんに俺は話しかけたいっ・・・!!出席番号順の席は入学したての今しかない・・・このチャンスを逃すな俺・・・!!!!


といっても、一ヶ月なにも進展していないピンチなのだ。ちゃんと話したのも移動教室のあの一度きり。女子と話すのは全く平気なのに、相手が五十嵐さんになるとどうも俺が俺じゃなくなる・・・。プリントを回すのでさえ顔を見ることができないし、後ろから見た俺の髪型って変じゃないかなとか意味わからんことばっか考えて無理だキモいな俺ぇぇぇ!!

「りょ〜!どうしたの頭抱えて、脳みそ取られたの?」

「近江・・・本気で心配してるよ顔で言ってくるあたりがウザイな・・・」

「ははっ!あっても無くても機能変わらないから大丈夫だと思うよ❤︎」

「おい近江、このっ・・・ニーブラァァ!!!!」

「うわっ、ギブギブ!!・・・っていうか古?!」


「フフッ」

((え・・五十嵐さんが笑ってる・・・?!))俺と近江は驚いて見合った。

「頭抱えてただけで、脳みそ取られたってっ・・変なの、面白かった」

小さな手で口元を隠しながらクスクス笑っている彼女が可愛すぎてヤバいんだけど、その前に。え?!笑うところそこ?!俺のニーブラは?!ていうかさっきまで席にいなかったよね?!いつ戻って来てたんだ・・・俺が驚きながらも彼女から目を離せないでいると、「いや、五十嵐さんそこで笑うの?!ツボ謎!!」と近江がすかさずツッコミを入れてさらに笑う彼女。そして予鈴が鳴る・・・。


俺のは全く彼女に効かなかったし、ニーブラも古いしなんかめっちゃ恥ずかしくなってきたんですけど・・・え、俺の背中見ながら何考えてんすか?そもそも俺の背中見てるのかな?もうちょっとこれどうしたらいいの?

考えてるうちに授業が始まった。うわこのタイミングでプリント回すのかよ・・・平然を装って彼女の方を見てみると、俺の顔を見てまたクスッとしながらプリントを受け取る。

え、さっきのそんな余韻ある??このツボ攻略すんのむずくね???


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定番技じゃ落ちない!?天然レベ高、五十嵐さん BabyNavy @babynavy

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