七景

七景


公園

竜介が写真を撮っている。

健介が人を待っている。


竜介 すみません。

健介 はい。

竜介 写真を撮ってもいいですか。

健介 いいですよ。

竜介 ありがとう。

健介 なんかポーズとかいります?

竜介 大丈夫。そのままで。


竜介、写真を撮る


健介 趣味で撮ってはるんですか。

竜介 そうだね。昔、写真家だったんだ。

健介 へー。すごいですね。

竜介 ありがとう。

健介 今は違うんですか。

竜介 ちょっと、仕事で色々あって辞めてたんだ。でも、最近また撮ることだけは再開してね。撮影は楽しいよ。

健介 それは良いことですね。

竜介 ありがとう。君は此処でよく見かけるね。君は此処が好きなのかい。

健介 はい。好きです。

竜介 そうか。僕も好きだ。

健介 此処はなんか,他とは違う。

竜介 間違いない。

健介 おじさんは楽しいですか。人生。

竜介 うん。楽しいよ。

健介 どこもかしこもこんな感じの場所だったらいいんですけれど。

竜介 そうだね。でも、案外どの場所も実はユートピアかもしれない。僕たちは美しすぎて汚れに敏感なだけかもしれない。ちょっと過激すぎたかな。

健介 いや。すごく勉強になります。

竜介 君は好きな子とかいる?

健介 います。

竜介 その子を大切にしなよ。人生において最も大切なことだ。

健介 します。

竜介 それでもね。だめになるときもある。その時は自分で自分の首を締めちゃだめだよ。それが一番愚かなことだ。

健介 おじさんは締めたんですか。

竜介 締めた。締めたせいで数年時計の針は進まなくて、この歳だ。また動き始めたけれど、残された時間は少ないようだ。不安にさせたね。ごめん。

健介 おじさん。僕はみんなに幸せになってほしい。

竜介 僕もだよ。ねぇ。きみ。此れを預かってくれないか。


竜介、鍵を渡す。


健介 なんですか。

竜介 この公園の管理室の鍵だ。

健介 おじさんが管理人。

竜介 昔、君ぐらいの年頃の時に渡されたんだ。ある人に。

健介 辞めちゃうんですか。

竜介 潮時さ。

健介 逢ったばかりの僕でいいんですか。

竜介 この場所の価値を知っている人に持っていて欲しい。

健介 僕、護りますよ。この場所を。

竜介 ありがとう。


悠とカンナがやってくる


竜介 待ち人が来たみたいだね。今日のところは退散するよ。

悠 おーい。

健介 あの。また逢えますか。

竜介 巡り逢いを期待しよう。


竜介退場


カンナ さっきの人は。

健介 とても、貴重な人。

カンナ なんだ。それ。

健介 なんでもいいじゃん。

悠 今日は何する?


暗転


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人生は限りなくkoi、ao。 容原静 @katachi0

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