Part 3「無知を知ること」

 僕らが二人の力を合わせても怪獣と戦えないと知った時、もはや何かをする気さえ起きなかった。ただパソコンの前で学校の課題を片付けていくことしか出来なくて、振り返れば、それは現実逃避の一環だったのだろう。


 そんな日々が続いた時、まだ連絡が付いていなかった蓮からメッセージが届いた。


 「なあ、裕翔。あの怪獣は何で構成されているんだろう?」


 僕はスマートフォンを何日も開いていなかったが、彼からのメッセージにようやく開いてみる気になった。蓮からのメッセージには三つの仮説が綴られていた。生物兵器説、ただの野生怪獣説、ウイルスが変異した説。この三つのうち、僕が有力だと感じたのは最初の生物兵器説だった。しかし、議論の内容としてはあまりにも荒唐無稽で、まだ真面目に議論すべきではなさそうだった。


 「蓮はどう思うの?」


 僕が蓮に連絡を返すと、すぐにこう返ってきた。


 「外から叩くのがダメなら、内側から叩いてみるのはどうだ」

 「内側から叩く?」

 「ああ。怪獣の動きをなんらかの形で硬直させ、俺が内部の防御力をゼロにする。そこから、君とあやめで柔らかくなった怪獣を消滅させるんだ」


 何を言っているかはよくわからなかったが、とりあえず僕らの考えるような作戦よりかは効果があるのは確かなようだ。


 「それで、どうやって硬直させ、内部の防御力をゼロにするんだ?」

 「俺に任せろ。この空間にいるということは、何らかのプログラムに基づいて動いている。もしくは、誰かが動かしている。なんとなく、これでわからないか?」

 「……そういうことか」


 まだハッキリとしたことはわからない。だが、この空間はプログラムによって構成されていて、何らかの作為によって生み出された怪獣たちが僕らの敵として立ちはだかっている。これは仮説としては、それなりに使えそうだ。


 「じゃあ、明日の夕方。三度目の正直を果たしに行こうか」

 「……ちょっと待って」

 「どうした?」

 「作戦会議しよう」

 「……わかった。あやめも呼んで、ちゃんと話し合おうか」


 この日の蓮との話し合いはここで終わった。ようやく道が拓けそうだ。ほんの少しだけど、気持ちが楽になった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

仮想勇者アノードスフマート 坂岡ユウ @yuu_psychedelic

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ