第3話 既読無視
冬。一年の中で最も寒い期間。私は自室にコタツを出し、ぬくぬくをしていた。アイパットの動画サイトで長編アニメを頭空っぽで見ている。
どうも、高橋ナコです。
こたつとは何故こんなに人を堕落させるのだろうか、起きてから半日がたとうとしている。
ブブッブブッ・・・。
こういう日は、何もしたくない。アニメを空っぽにしてみていたい。携帯なんて触りたくはない。おなかがすいたら宅配サービスを利用する。大人とはこういうイキモノなのだ。
ブブッブブッ・・・。
アニメって何故にこんなにも無心で見れるのだろうか。私の始めてのアニメは美少女戦士ものだった。クリスマスプレゼントを美少女戦士のグッズを頼んだのを今でも鮮明に覚えている。
ヒーローものからラノベもの、色々のジャンルがあって、その一つ一つに良さがある。私の至福の時間だ。
ブブッブブッ・・・。
携帯のバイブが耳に入るがシカト、シカト。今日は出会わないぞ。こんなに寒いのに、スカートをはいたり、メイクをしたり、髪をセットなんて絶対にしない。
女子は大変なんです。君らのように、身一つでは出会えないのですよ。
今は写真加工という技術がある。加工をして少しは綺麗にしているがために、リアル会う時には、小奇麗な身なりをしなければ、申し訳なさが生まれてしまうからだ。
加工詐欺をするとその日の男性人の酒の足しにされてします。
男性の皆さん、女子は意外と加工について申し訳ない気持ちも少しはあるんですよ。なので、そんなに男子会のときにぼろくそに言わないでもろて。
「うぅ~~~~~! 泣けるな・・・」
主人公を助ける、ヒロイン。健気だ。
最近、涙もろくなったのは、私が最近ずっと独り身だったからなのだろうか。なんでも泣ける。子犬が一生懸命走っている写真だけで、泣ける。
きっと私の心がそれだけ疲れているのだろう。
疲れているから人は泣ける。仕事をすごくがんばっても、誰からも褒めてもらえず、時間だけがすごいスピードで動いていく。月曜日かと思ったら、土曜日で、休日はアッという間。そんなスピードだと泣くことすら、疲れたことすら、忘れてします。
だから、こんな暇なときに、蓄積された分が溢れてくるのだ。泣きたいよ、涙だしたいよ、がんばったよ、と、言わんばかりに涙がポロポロででくる。
全人類の皆さん。いつもえらいぞ! がんばってるよ!
私は涙を袖でぬぐい、呑もうか呑まないか。悩ましい。
「こういうときは、呑むぞー!」
独り言を盛大にかまし、チューハイ缶500を一気にゴクンゴクンと飲み干す。
ブブッブブッ・・・。
立ち上がり冷蔵庫に向かうと、フローリングのヒンヤリが少し気持ちよく足裏から体を浸透してくる。ストックしている銀缶とキムチをとり、そそくさとコタツへダイブする。
先ほどからなっている携帯を手に取り、ロックを解除すると、出会い系アプリの通知が70件とでている。
片手で缶をあけ、口へと持っていく。ゴクンゴクン。
「んー・・・」
『なにしてますか?』『会お~』『あわない?』『かまってよ』皆同じようなことをよくも送ってくるな。人差し指でスワイプスワイプ。
携帯をスワイプしながら、ゆっくりと体を横へ、こたつに体をすっぽり納める体勢へと。携帯の画面を下にして、目を瞑る。頭の中に仕事というワードが出てくる。
「既読無視無視、で、おやすみなさい・・・」
明日もがんばろう。高橋ナコはこのまま寝ることにした。
皆さん、おやすみなさい。
ナマモノ 夏目柚 @natsu0829
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