高校生のころ、主人公倉橋はクラスメイトの福山から聖水を買います。これはおそらく聖水ではないだろうと思いながらも、高校生にとっては高額な1万円で。
しかしその後、倉橋は聖水の効果によって変化していきます。劇的でもなく刺激的でもないのですが。
しかし、なぜ?
神の有り難い力が備わっていないはずのそれに、いったいどんな力が?
その理由があまりにも濁り果てていて、私はなんだかものすごく納得しました。
いわゆる陰キャと言われる男性諸君(と私)なら、多分なんだかすごくよく理解できると思います。後半のパートも頷くことばかりで。
私が思うにこれは恋の物語です。
ただおそらくこれが小説でなければ恋の物語ではないでしょう。
言葉で説明せず映像だけでわからせることなんてできない感情の動きが、文章の中に込められているからです。(映像化したときに一人称フルナレーションでやると言うのならその限りではないですが)
映像化したら伝わらない、小説として読む意味のある小説でした。
そして、読後の独特な感覚は、この筆者ならではの味です。
良いと思ったら野良ガエルさんの他作品もお薦めいたします。