正しい盗み方

 皆様は「盗み」をした事が有りますでしょうか?

 勿論「窃盗」は犯罪です。それはやめましょう。



 では「正しい盗み方」とは?



 大陸のお話に「盗み方」を表したものが有りますのでそれを今回紐解いてみようと思います。私の記憶頼りなので少々覚束ないですが…


 あるところに貧しい農夫がおりました。農夫の隣にも同じく変わらない様な貧しい農夫が住処しております。

「今年も実りが悪いのぉ」

 そうボヤきながら痩せた土地を耕す毎日…

 明くる日隣家を見ますと、少しましな暮らしぶりになっている様な気がしました。それから数年で隣家は破れた垣根を直し、着物も改めて目に見えて裕福になって行きました。


(これは如何なる事だろう)

 農夫は隣家を訪ねました。

 隣家の農夫が出てきます。明らかに小綺麗になっている農夫。「はいはい何でしょうかお隣さん」


「お主はワシと変わらぬ身代で貧しかった筈。いかにしてこんなに裕福になった?」 

 疑問を口にしました。

「それは私は『盗み』をしたからですよ」

「何、盗みとな」



 明くる日、貧しい農夫は豪農の家に盗みに入って捕まり捕らえられました。

「何故アイツの様に上手く出来なかったのか」

 そればかりを思いながら連行されていると、隣家の農夫の家の前に差し掛かかります。

「お前さん一体何をしなさった」

 隣家の農夫が出てきて訪ねます。

「どうもこうもお主の言う通り『盗み』に入ったらお縄になったのよ」

「人様から盗むならお縄になるのも仕方ないがいきなりどうして…」

「お主が『盗み』で財を成したと言ったからよ」

「それでか。お前さん早とちりしてますよ」

「何?」

「私は『天』から盗んだのですよ」

「けったいな事を申す」

「けったいな事も何も。天の財物は公的なもの。いくらでも機会が有れば盗んで良いもの」


 隣家の農夫が申事には。

 『天』とはこの世の自然そのもの神のもの。朝の光で目を覚まし、日の入りにあわせて眠りにつく。

 まず畑に出て種を蒔く。そして農夫は『水』を盗んだ。小川から水を取り、水やりをする。

 そして農夫は『光』を盗んだ。陽光の暖かさが発芽を促す。

 そして次に『気温』を盗んだ。段々と暖かさが広がっていき成長を促進する…


 この様に天然自然の全てを余すことなく『盗む』事で豊かな実りを手に入れた。

 それを弛まず毎年感謝して田畑を耕すことで安定して実りを手に入れる事で農夫は豊かになった。ただ『当たり前』の事を飽きもせず行った結果であったのだ。


「盗みは天から盗むべし」



 我々も他人の実りには特別な事が隠されているのではないかと勘ぐるもの。しかして基本に忠実な堅実な方法で実りを得ている事もある。

 今回の話は理想論であります。ですが人間『お縄』になる事はしないに越した事はないではないですか。


 基本に従い『ズル』をしないでいる方々に陽の目が当たらない昨今。現代では考えさせられる題材かもしれませんね。現代は闇バイト等も横行しておりますし…


 どうか報われます様に…


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太刀山のひとり言 太刀山いめ @tachiyamaime

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