ルサーの街の時計台

春も終わりかけ、あたたかい日差しが差す夏の日。今日は年に一度の歓迎祭（かんげいさい）。スピカの住む島に、船で多くの人が海を渡って訪ねてきます。マントを羽織った少女アルファルドもその一人。ふたりは港の時計台の下で出会い、友達になります。
　「私は帰らないの。」
唐突（とうとつ）にアルファルドに伝えられ、これから一緒にいることができることを嬉しく思うスピカ。夕方になると祭りが終わり、人々が船に乗り込みます。しかし晩御飯の時間になると、街では不思議なことが起こりました。
　「時計がない！」
街から一つも時計がなくなってしまったのです。街の家々やスピカの腰につけていた懐中時計には針がなく、ふたりがおしゃべりしていた時計台にもありません。混乱で街の大人たちが時計台の前の広場に集まります。アルファルドは…続きを読む