「新しいグルメ小説の発見は、人類にとって、新しい星の発見よりやべぇ!」

 何がやべぇかと言うと、まず文体。教養の高さがミディアムレアの分厚いステーキの肉汁のようににじみ出てます。
 本作の作者は、「異聞・鎮西八郎為朝伝」(※模造品にご注意ください)という源平活劇もものしていますが、時代の雰囲気を浮き彫りにする上品な文体を読んだ時、「こ、こいつタダモンじゃねえ!」と腰を抜かしました(こいつ呼ばわり失礼)。一方この「フィーネ・デル・モンド!」の文体は、まったくの正反対。ルビでボケ又はツッコミを入れるという常時ハイテンションなスタイルですが、相当「わかってる」人でないと使いこなせない文章で、読んだ時は「こ、こいつタダモ(以下略」と腰を抜かしました。かと思うと、章間のシリアスな「教会史」は、どこの旧約〇書だよというくらいの「らしい」文章。抜けた腰が戻らないので、今寝ながらこれを書いています。
 そしてもちろん、グルメを唸らせる料理の描写も見逃せません。こんな文章スキルマスターが繰り出す美食描写の数々は、就寝二時間前の閲覧をお勧めしないレベルです。
 主人公と仲間たちの掛け合い、容赦なく読者を襲う珍味佳肴の描写。そして独特過ぎる世界観。かつてサヴァランは、「食卓は、初めの一時間のあいだ、人が決して退屈しない唯一の場所である」と書きましたが、この作品は長く読者を退屈させない「食卓」です。この作品に出合えた幸運に乾杯!
 

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