うそつき

高校時代に付き合っていた真由美とのメールを、久しぶりに見返して懐かしむ。

まだまだ初心だった俺は毎回長文で返信しており、良くも悪くも子供っぽい。


当時はLINEが出たばかりの頃で、そういう背景も含めて常に送り合ってたっけ。


不思議と眠れない真夜中。一番古い部分から、徐々に新しいメッセージまで眺めた。

……あ、もう少しだ。もう少しで、俺と真由美が別れる原因になった所に到達する。


     【どうしたの?】


【あなた浮気してるよね】


     【してないよ、なんで?】


【知らない女と寝てたから】



ちらりと見て、携帯を閉じる。ここから先の言い合いは見るに堪えたものじゃない。

三十分以上メッセージを送り合い、一時間以上通話をして、そんで別れたんだよな。


――今でも、彼女を嫌いになれない。何故なら俺は本当に浮気をしてなかったから。

真由美以外の女と寝ていた事なんて当然なく、それは勘違いだと何度も言ったが……


「結局、俺が飽きられたって事かね。…………ん」



部屋の電気を消し、真っ暗闇の部屋で響いた通知音とそれを知らせる小さな光。

こんな時間に一体誰だと思いながら、布団に入ってその通知の正体を見てみる。


「……真由美!?」


真由美だった。彼女との会話を見返してた俺に、偶然今メッセージをしてきたのだ。

ほんの少しだけ言いようもない焦燥感を感じつつ、恐る恐るその内容を目に入れる。





【ほら今も知らない女と寝てるじゃん】




俺はそれ以来、真由美と話したデータをすべて消した。

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〇〇県-〇〇市-逢狂町の日常 羽寅 @SpringT

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