来訪者

『――のため、暫くは外に出ないようおねがいします』


「はぁ」

 もう何度も聞いた注意勧告に嫌気がさし、テレビを消した。隣県に台風が直撃している影響で、朝からずーっと同じ内容のニュースを流してやがる。



ガタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタ


 確かに何度も警告するのは大事だとは思うが、俺が住んでいる所はちょっと風が強く吹いてるだけじゃないか。


「……」(窓はうるせーけど)


 と自分で自分に突っ込みつつ、深夜という時間帯から眠気が襲ってくる。明日は早いし、そろそろ寝なければ。

 そう思いながら就寝前のストレッチをして身体をほぐし、部屋の電気を消した。……それにしても、段々と強くなってる気がする。窓の音。


ガタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタ



ガタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタ



 雨、は降っていない。というか風だってそこまで吹いてなかったはずなのに、自分が気にしてから騒音が耳に入るようになってきてしまった。


 それも異常に。網戸が窓枠に打たれる音……にしては煩すぎる。もしかして何かが壊れてしまってるのか?


「引っ越してきたばっかりだぞ……勘弁してくれよ――」



ガタタタタタタタタタタタタタタタタ


ガタッ


 カーテンをずらして窓を見る。外には真っ暗闇が広がっていると思っていたが、そうじゃなかったらしい。だれかいる。



「フーーーー フーーーーーー」


 窓に思いっきり顔をくっつけて、こちらを見ながら鼻息を荒くさせた女。こいつが手を叩きつける音が、さっきからずーっと部屋中に響いていた。


「…………」


 俺は、カーテンを閉じた。たった数秒ほどの出来事を、出来るだけ忘れるようにして寝た。“あれ”は本当は気づいちゃいけない存在だと直感的に分かったから。



 マンションの八階だぞ、ここは……。

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