【短編】感情の大乱闘

ハルくん㌥

第1話

午前10時。

天気は快晴、気温は寒くなく、暑くもないちょうどの気温。


学生である俺は登校後の最初に眠くなる時間帯だ。さらに授業内容は教卓から一切離れない担当教師である地学だ。地学はまあまあ好きだ。しかし、あまり興味が湧かない天候の話をされても睡魔との戦いには負けてしまう。せめて授業内容が宇宙とかであれば興味を持ち、寝なかっただろうからこの後の悲劇?は起きなかっただろう。


ちなみに今の俺の席がどこにあるのかを教えよう。俺の席はど真ん中の列の後ろから2番目で前の人は身長高くガタイが良い。先生からは俺の姿が見えづらいという寝るポジションとしては最適の場所だ。


「ヤベー。めちゃくちゃ眠い。俺ちょっと寝るわ〜。」

「俺も眠いから寝る〜。」


俺は隣の席にいる友達に声をかけると友達も同じように眠いらしく寝るそうだ。


俺は机の上でモゾモゾし、ベストポジションを見つけて眠りに入ろうとする。しかし、悲劇はここから始まった。いや、始まってしまった。


カパッ


「ん?」


さて寝ようと意識を手放そうとした直後に音が鳴り、気になった俺は意識を暗闇から戻す。起きたはいいが俺の目の周りで特に変化はない。


「どした?」

「いや、なんか音がなった気がしたから起きたけど気のせいだったわ。」


特に何も変化がないと思った俺はもう一度寝ようとした時、ローファーに違和感を感じた。

左足の踵がすごく沈むのだ。

俺は気になりローファーを確認した。そして違和感の正体に気が付いた。


「俺のローファー、踵部分が壊れてるじゃん。」


そう、踵部分の底が抜けてしまっていたのだ。それにより高さが合わず踵が沈むのだった。


「なぁ、見てくれよ。俺のローファー壊れたんだけどw」


俺は周りの友達に壊れたローファーを見せた。


「綺麗に底が抜けてんじゃんw」


友達は大爆笑。俺も表面では大爆笑。しかし内面では大慌て。なぜなら


➖このローファー1ヶ月前に修理したばかりなんだけど!!➖


直したばかりのローファーが壊れ、親に叱られることが決定し、俺は萎えてしまった。もはや、授業(睡眠)どころではない!


とりあえず靴を体育の外履きに履き替えたいと考えることでいっぱいいっぱいだ。さらに、職員室に行って担任に事情説明しなくてはならない。


キーンコーンカーンコーン


「気をつけ、礼」

「「「「ありがとうございました」」」」


俺はすぐに職員室へ向かう。しかし思うように歩けないから足を庇いながら歩いてる人みたいだ。

廊下ですれ違う他クラスの友達は怪我したのかと聞いてくる。その都度、ローファーが壊れたと言ったら大爆笑された。


なんとか職員室に着き担任の机に向かう。


「先生。」

「どうした○○」

「ローファー壊れました。」


俺はそこが抜けたローファーを担任に見せた。担任の机の周りには他の先生もいてみんな一斉に俺が見せたローファーを見る。


そして先生方にも大爆笑される。


「○○。綺麗に底が抜けてるな。結構使ってたのか?」

「使ってましたけど1ヶ月前に修理してもらいました。そして、修理してもらったところが抜けました。」


また大爆笑された。グスン。


「体育で使ってる外履きで今日は生活してていいですか?」

「それしかないな、今日は外履きでいな。」


事情説明もしたことだし俺は職員室を出て教室へ戻る。その途中で顧問とすれ違う。足を庇いながら歩いてる俺に声をかけてきた。


「○○、足引きずってるけどまた怪我したのか?」

「違います。ローファー壊れました。」


もちろん大爆笑された。

あ〜、一躍有名人か(現実逃避)


➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖


ローファーが壊れ、みんなに大爆笑され俺のHPはもう0。なのにだ!

なのに神様は俺に嫌がらせをしたいのかHPが0の俺に追撃を与えてきた。

それは放課後のことだ……


「ねーね○○君。実はさお願いがあって。」


帰りのHRが終了し処刑場となる我が家に帰ろうとした俺をある女子が引き止めた。


「ん?どうした?」

「○○君って、よく△△君と仲いいじゃん?実はさ、私この前△△君に告白されたの…」


ちょっと待て!俺そんな話聞いてないぞ!?

なんでそんな面白い事を黙ってしてたんだ!

俺らがさっさと告れって言っても『今は無理!いつか告白する。多分…』ってヘタれてたのにするなら教えろよ!


「お、おう。その、おめでとう?」

「え〜っと、私からだとすごく言いづらいから△△君に伝えて欲しいの。その……告白の返事を。」


おっとなんか嫌な予感がしてきたぞ?


「い、いいけど俺も告白の返事を聞いてもいいの?」

「う、うん。その、広めないでね?」

「わかった。」


「えっと、告白してくれてありがとう。でも、ごめんなさい。って伝えて欲しいな。お願い!」


そー言って彼女は走り去っていった。


➖おいおいマジかよ。振られた事を伝えた後の慰めしなきゃなんねーじゃん。そして気まずいわ!➖


とりあえず△△に俺は連絡を入れる。今どこにいる?って。


【まだ校門のとこにいるぞ。どうした?】

【いや、お前に話したいことがあってさ。そこで待っててくれ。今行く】


「それで○○。話ってなんだ?」

「………その、お前告ったんだって?」

「な、な、な、なんで知ってんだよー!」

「いや、その。さっき返事を伝えて欲しいって伝言を頼まれて、さ。」

「な!?……その、返事はなんだって?」


「……… 告白してくれてありがとう。でも、ごめんなさい。と彼女は俺に伝えたよ。」

「そ、そんな…」

△△は断られたことがショックで涙目になってしまった。


「な、泣くなって俺がなんか奢ってやるから。」


とりあえず俺は振られた△△を慰めるために時間を費やした。そして、お財布も心なしか軽くなった気がした。

あいつ、慰められてる事をいいことに俺に700円も奢らせやがって…


➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖


ローファーは壊れ、友人が振られる事を伝え、慰めてはお財布が軽くなりと俺のHPは0なのに追撃を食らった俺だがそれだけじゃなかった。


帰りの電車待ち。俺は椅子に座ってスマホでゲームをしてた。引っ張って敵を倒すあのゲームだ。俺がゲームを始めて5分ぐらいだろう。大学生の男女がこちらに歩いてきた。


男性は自販機で女性の飲み物を奢っていた。それを見た俺は優しい彼氏だなと普段は決して思わない事を思った。普段はリア充は撲滅とか思っていたけどその時だけは萎えたり、気まずかったりでそれどころじゃなかった。


大学生の男女が隣の椅子に座ってくる事を横目で確認しながら飲み物を飲む。その時に聞こえてしまった。


「ねぇ、なんで前の彼とは別れちゃったの?俺でよければ話しきこうか?」(イケボ風)


ブフーーーッ


リアルでそんなことを言う奴なんて世の中いないと思ってたのに隣にいたわ。しかもイケボならまだしも声作ってるし。ましてやフツメンがそんなこと言ってるとか痛すぎる!


まさかの事態に俺は口に含んでいた飲み物を吹き出してしまった。

それでも、大学生2人は会話を続ける。


「その、元カレが意外と自己中で…、我慢の限界でした。」

「それはひどいな。俺ならそんなことしないのに…」


いやいや、フツメン君?

君は、心痛めてる彼女を狙ってるのかな?いや、狙ってるよね?さりげなく自分は優良物件って勧めてるよね?


こんな風に萎えたり、気まずかったりで疲れている俺の隣で胸糞悪い展開を繰り広げる二人組に俺は呆れていた。


[まもなく電車が到着します。]


お馴染みの駅のアナウンスが俺を長時間見せられていた胸糞悪い展開から解放してくれた。がしかし、あろうことか2人は電車内でも俺の隣に座ってきた。他にも空席がたくさんあるにもかかわらず。


電車内でも繰り広げる胸糞悪い話。もう聞きたくない俺はワイヤレスイヤホンを耳に装着。よし曲を聞こう。ここは気分を上げるためにYOASOBIを聞こう!


あれ?曲が聞こえない。なんでだ?俺はワイヤレスイヤホンの充電を確認し絶望した。そう、0%だったのだ。


我が家の最寄り駅まで後8駅。俺は必死に耐えた。歯をギシギシ鳴らしながら。多分周りから見たら近づきたくないと思うほど苛立ってただろう。


俺が降りる駅の一つ前。ここで天は我に味方をしてくれた。そう!フツメンの男性が降りたのだ!これで平穏だ!俺は喜んだ。


しかしお馴染みのこの展開。男性が降りた後の女性がとんでもない事を呟いたのだ。


「ハァッ。あの人、私を狙ってるのバレバレだよ。あの人は正直無理なんだよね〜。これからドンドンアピールされるだろうしどう躱そう。」


クスッ


あんなにアピールしてたのに眼中にないと分かって少し笑ってしまった。フツメン君どんまい。


しかし、俺は気付いた。いや、気付いてしまった。


あんなに楽しそうに喋っていたのに相手がいなくなった瞬間、女性の闇が見えたということは、俺の異性の友人も実は陰で皆、そう言ってるのではないかと思った。


そう思うと俺は再び天から地獄に落とされた気分になり、さらに自分の何かが壊れる音が聞こえた。

最寄り駅に着いてからどうやって帰ったか正直覚えてない。


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次の日


最初の授業は担任だった。授業がハイペースで進むにつれて周りも疲れてきたのだろう。集中力が欠けてきていた。それを見た担任は雑談として今何が欲しいかとクラスメイトに尋ねていた。


ゲーム、テーマパークのチケット、乃木坂のサイン、iPad、彼女、彼氏。


周りはみんな一斉に欲しいものを言っていく。


「○○は何が欲しいんだ?」


担任は俺にも聞いてきた。


「平穏が欲しい。」


俺は頭がおかしくなっていて訳わからない事を述べた。

周りはギョッとする。隣の友人はお前大丈夫か?って尋ねてくる。


「平穏が欲しい。」


俺はもう一度言うと


「いい加減元の○○に戻れ!」


と隣の友人は俺にゲンコツを落とした。


「あれ?俺今なんて言ってた?」

「やっと戻ってきたか。お前は今一番欲しいものはなんなのか担任が書いてたぞ。」

「ちょっと待ってて。」


Amazon開いてあるワードを検索


ズラララ


「俺は8000円以上するメリケンサックが今一番欲しいです。」

「おっ、やっといつもの○○に戻ったぞ。」


担任はビックリして俺に質問してきた。

「なんでだよ」と


「いや、昨日はローファーが壊れ、気まずい状況を切り抜けた後、満身創痍な俺の横で『ねぇ、なんで前の彼とは別れちゃったの?俺でよければ話しきこうか?』とイケボ風に言うフツメンが胸糞悪い展開始めやがったせいで俺の気分は最悪。あの野郎を殴りまくりたいと思ったからです。上手くいけば無料でフツメンからイケメンに整形できたかもですね。そしたら女性の方はフツメンと別れた後に溜息をつき、タイプじゃないと知らないとこで振られなかったのに。」


俺は昨日の出来事を簡潔に喋った。クラスメイトはお腹を抱えて大爆笑。しかし先生は、


「やめなさい。いいか、絶対にやめろよ!」

「それは『押すなよ?押すなよ?………押せよ!』みたいなフリですか?」

「馬鹿野郎!フリじゃねぇ!」


何故か怒られた俺であった。

解せぬ。


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こんにちは、春幸夜空です。

最近は特に忙しくてなかなか続編を書けない中、実際に起こった出来事を少し短編として書こうと思い今作品を書きました。

こんなことあるのかよ!と読者の皆様は思うだろうけど実際に私の身の回りで起こりました…。


優しい方は♡とコメントしてくれたら嬉しいな〜


ついでにお知らせさせてください!

今現在、新作を少し書いています。書き置きが10話できたところから投稿を開始しようと思っておりますのでよろしくお願いします。


※壊れたローファーは修理屋さんのおじさんが頑丈に無料で直してくれました。

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