ノスタルジックな思いに浸ることができる逸品です。

 一つの作品の巧拙は、つまるところテーマなり作者なり登場人物なり、何でもいいけど、「感情移入できるか?」で決まるのでは?

 「『死ネタがあるので、なんでも許してやるよ』と、心の広い方のみお進みください。」と、櫻葉月咲さまが概要欄で仰せですが、「残酷描写有り」とはつまり、幼馴染みを殺人事件で失った過去があるというだけで、櫻葉月咲さまは余りにも誠実過ぎる方なのでしょうか、それとも意図的に「残酷描写有り」の一言で以て集客を狙ったものでしょうか。その辺のところはよく分からないのでございます。

 殺人事件で大切なひとを失うというのは稀有な経験でしょうが、愛した人を失恋、絶縁、絶交あるいは時のまにまに失うことは、誰にでも避け得ないこと。
 読み進めて、話のカラクリが解けてくるに従い、私は軽く見積もって20人以上との別れの思い出にドスンと押しつぶされそうになりました。

 話は、亡くなった和音との、夢幻のような再会でエンディングを迎えます。

何やら人恋しい靜かな夜などに、軽く読み流されてはいかがでしょうか?
 皆さま方それぞれの、とびっきりのノスタルジーに耽っちゃって、「ええ夢みせてもぉたで。」となるかも、しれません。
知らんけど。