第6話 特殊訓練施設
「っなんだ、これ…」
雲の上まで続いているのではと思えるほど高く聳え立つ外壁、屈強な男が何人集まっても開けそうにないほど分厚く大きな門、そんな門に大きく金色で描かれたナスタチウムの花、そして中から聞こえてくる悲鳴。
…悲鳴???
まてまて、さすがに悲鳴はまずいだろう。もしかしたら何かの軋む音かもしれないし…
「ギゃあああああアアアああああアアアあアアア!!!!!」
あ、悲鳴ですね。これは。はい。
「うん。いのちだいじにだな。帰ろう。」
流石にこれはまずいだろう、頭の中で危険を知らせるアラームがうるさすぎて耳が壊れるくらいの勢いで鳴り響いている。
そう思いくるりと180度方向転換すると…
「やあやあやあ!もう着いていたんだねっ!集合時間にはまだ早いと言うのにさ!」
この癖強めな甘い声は…
「改めましてこんにちはカランコエ君!おっと失礼、カラン君だったね!!僕はスイセン、時間前行動ができる偉い君には僕のこの美貌を眺める権利をあげようじゃあないかっ!!!」
思い出した。この人は確かあの日の地下室でずっと鏡を見ながら自分を褒めてた人だ。この人が僕の講師なのか?にしても改めて近くでみると本当に綺麗な整った顔をしているな。まるで神話に出てくる神様みたいだ。いや、でもずっとポーズとってるな。うるさいな、動きが!
「よろしくお願いしますスイセンさん、えっと僕の講師というのはあなたのことでしょうか?」
「いかにも!!リンドウが直々に僕を指名したのさ!辛くても逃げ出すんじゃないよ!ははっ!」
リンドウさんが直々に?それはすごい事なのか?というか辛くても逃げ出すんじゃないよって…まずい、怖くなってきた。
「とりあえず訓練内容の説明をしないとだね、実際に見てもらう方が早いからとりあえず中に入ろうか!!」
「あっ!あの!そもそもこの建物はなんなんですか?昨日僕が下見に来た時にはこの辺りは何もなかったと思うんですけど、流石にこんなに大きな建物を見逃すはずもないし…」
そう、確かに昨日見た時ここには何も無く、どこまでも平原が広がっていただけの筈なのだ。少なくともこんな悲鳴が聞こえてきた記憶はない。
「そうさ、ここは公式にはただの平原だということになっているよ!」
「公式には?」
「その通り、この建物は招待されたものしか入ることはおろか存在を確認することすら出来ないからね!君は今日この時間に招待されたから今こうしてこの建物を確認できているのさ!!まあ安心することだ!この訓練を乗り越えれば招待されずとも自由に利用できるようになるからね!」
招待されたものしか入ることはおろか存在を確認することすら出来ない、か。そんなことが出来るのかと耳を疑ってしまう内容だけど今実際に目の当たりにしたわけだしな…一体どんな仕組みなのだろうか、検討もつかない。
「さあせっかくだ!扉を開けてみたまえカランくん!」
「はい!」
本当に開けられるのか不安になるほど大きな門にそっと手をかけ力を込める。
ギィッ……
「…凄い。」
ゴツゴツとした岩山、木々草花が生い茂る森など、大きな滝では落下してきた水が真っ白な水煙を上げている。そしてそれが中心に咲き誇るナスタチウムの花畑から伸びる道を境に区分けされているようだ。
「驚いたろう?」
「はい、建物の中にこんな空間が広がっているだなんて思いませんでした。」
砂漠のような土地から森林までがひとつの空間にあるなんて、いったいどうなっているのだろう。
まるで天国と地獄両方が広がっているみたいだ。
「では改めて我々ナスタチウムの特殊訓練施設へようこそ、カランくん!!」
幸福の金を鳴らせ sENA @ks_o8
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