『僕』の住処、その変化
僕たちの住処が完成してから、生活は大きく変わった。
快適性の向上はもちろんのこと、あのモグラもちょくちょく訪れるようになったのだ。
なんでも「あの時に出されたメシが美味しかったので、また食べに来たくなった」とのことらしい。
「もちろんタダメシとは言わねえよ、ほれ」
と、モグラはいつもいくらかの食糧や資材、なにかの種なんかを無造作に置いていく。……正直貰いすぎなのでは? と思う量だったが、向こうは「いいから受け取っておけ」とへらへら笑って去っていくのだ。
とりあえず、せっかく受け取ったものは無駄にしたくなかった。
日持ちがしない食糧はさっと料理したり、保存食に作り替えたり。
よく分からない種も敷地の片隅で育ててみれば、土も水も良いおかげかよく育った。今では自生していた蓮や火星苺だけでなく他の野菜が収穫できるようになってきたくらいだ。
先日貰った卵からは糸吐虫が孵ったし、殖やせばいずれ糸や肉が採れるかもしれない。そうするなら、モグラに飼育小屋の建設を相談する必要も――
という具合に、安住の地が整っていくと同時に毎日が忙しくなってきた。
けれど、あの人や、たまの客人を迎えるためと思えば、不思議と苦では無かった。
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