第12話
「それで首尾よく撃退には成功したのですね?」
「はっ、もちろんでございますっ!!さすがローカス王・・・兵隊長であります」
私が見つめると報告に来た兵士が言い間違いを訂正する。
「それで、軍は?」
「そのまま追撃を行って、制圧するとのことです」
(はぁ・・・)
私は頭を抱えます。
目を離すと、とことん自分勝手な人で困ります。まるで、5歳児のよう。
「あと・・・伝言が」
「なんですか?」
「俺に、任せろっ!!だそうです」
「はぁ・・・っ」
頭が痛くなりました。
その理由が分からない様子のこの兵士さんは不思議そうな顔をしています。いい報告をしたのにどうして、そんな顔をするんですかって顔です。
(どうしましょうかね?)
貴族や平民には、少しというかかなり嫌われているローカス元王子。でも、軍部からはかなり信頼を置かれているようです。さすがにお灸を据えたから帰ってくるように言っても、反旗を翻すようなことはないと思うけれど、国内に戻ってきても、居場所はないでしょうし・・・。
「このままがベストじゃないですか?帰ってきた時は英雄か躯か。あの方はそれでいいと思いますよ」
「あぁ、クリスくん。ありがとう」
クリスくんが紅茶をくれた。
彼は、あの婚約解消パーティー(?)の数日後、私の元で修業したいと言ってやってきました。でも、実際は私の秘書兼相談役のようなことをしてくれているので、本当に助かっています。
「でも、家に家族を残した方々もいるのですから、引き際も間違えないようにとお伝えください」
「ご心配なく。ローカス王・・・兵隊長は無敗の男でございますから」
そう言って、兵士は嬉しそうに走っていきました。
私はクリスくんの入れてくれた紅茶の入ったカップを手に取ります。
(でも・・・死んだら負け。死ななければ負けてないとあのお方は仰っていた気がするので心配ですわ)
「んっ、美味しい」
私がクリスくんを見ると、彼は笑顔で応えてくれます。
「本当に、アン様が国王様の養子に入り、執務をされてから国民のみなさんの笑顔が増えましたね」
「そうかな?みんなが幸せなら・・・嬉しいな」
まだまだ、未熟だけれど色んな人の協力を得ながら、ここまでこれました。
「ローカスが兵士をむざむざ死地に連れ込むようなら僕が彼の首を刎ねてでも、兵士のみなさんの命を守りますよ」
「クリスくん・・・」
特にクリスくんは本当によくやってくれています。
そうそう、リリスとロディは、棒叩き百回の刑に決まりました。ただ、彼女達が顔をくしゃくしゃにして何度も懇願したので・・・というわけではありませんが、棒叩き10回と断髪と領地没収、それと屯田などの労役に決まり、今もきっと大地を耕して新たな開拓をしている時間でしょう。
財政難が続いておりましたが、貴族も兵士も街の人たちもみんなが協力してくれるので、みんなで楽しく協力しながら、暮らせています。そんな中で死刑はなるべくなくしましょうと言う話があったので、法律もクリスくんと私中心に被害者の気持ちなどもくみ取りつつも、国のために働いてもらう方向で動きました。
そんなこんなで、私たちの国は何世代にも渡って繁栄することになりました。
私の結婚相手は誰なのか、ですって?
それは・・・もう少しあとのお話です。
おしまい。
【完結】今,婚約破棄するのは悪手かと。恥をかかせたい御様子ですが、恥をかくのはあなたですよ? 西東友一 @sanadayoshitune
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