私の好きな指

七瀬 北斗

第1話

 『神経質そうな…』


 多分、一言で言葉にすると、そうなってしまうのだが、そんな悪いイメージではなくて。


 細くて…

 長くて…

 時折、不機嫌そうに、苛立たしげに机をカツカツと、指で叩く。


 彼のそんな指先をボンヤリ見ていると、


『何見てるの?』


 不機嫌そうな、貴方の声が聞こえる。


『指先、見てた』

『はぁ?意味わからないんだけど?』

『いや、キレイな手だなって…』


 そう言うと、

『…ますます意味わからないだけど…』

 そう言いながら、髪をかきあげる仕草が、やっぱりキレイだな、て見とれる。


『男に手がキレイって、誉め言葉にならねぇよ…』

 ちょっと苛立たしげに、彼は呟いて。カタカタとパソコンのキーを叩くと、電源を落とす。


『もう、終わったの?』

 そう聞くと、

『何か、集中切れた…』

『…ごめん、邪魔、した…?』

 私が聞くと

『別に構わない、課題の提出はまだ先だから…ほら、飯、行くぞ』

 

 そう言って、彼はさっき自分の髪をかきあげたキレイな指先で、私の頭をクシャっとかきあげた…



 

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私の好きな指 七瀬 北斗 @sevensdipper

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