第18話


翌日


俺はいつもより早く家を出て登校し、桜井のいる教室へと向かう。

燿の話によると桜井はいつも早く登校し、読書をしているそうなのでそこが狙い目だと言う事だ。


教室へ向かうと案の定、桜井は1人で読書していたので俺は桜井に声をかける。


「なぁ桜井、ちょっといいか?」


「?何かしら鏑木君、君が私に話しかけるなんて珍しいわね。ついに私に、謝罪する気になったのかしら?」


「なんでお前はいつもそうなんだよ!まぁいいや、それよりもここだと話しづらいから場所を変えないか」


「へぇー、君がねぇ、ふーん、別に良いわよそれでどこに行くのかしら?」


「こっちだ」


俺は桜井を空いている実習室に連れて行く。


「ここなら誰も来ない」


「こんな所に連れてくるなんてなに?告白でもしようとしているのかしら?残念ながら君みたいな人はお断りよ!」


「俺だって、お断りだよ!」


「それなら何かしら、早くしてちょうだい!」


「その事だが・・・なぁ桜井、お前が付けてるその髪飾りって、もしかして兄からもらった物じゃ無いか?」


「どうしてそんな事を聞くの?」


「質問に答えてくれ!」


「ふぅー、そうよ、この髪飾りは私の誕生日に死んだ兄がくれたものよ」


「やっぱりか、因みにもう一つ聞くが桜井は今母親と二人暮らしか?」


「だとしたらなんなの?人の家庭に首を突っ込むなんて君は最低ね」


「なんとでも言え、だけどこれだけは言わせてもらう。お前の兄はお前の事をずっと心配しているってな!」


「はぁ?何言ってるの鏑木君!貴方に何が分かるって言うの?」


「信じられないかもしれないが、俺の心臓は桜井、お前の兄である吉川広樹さんの心臓なんだよ!」


俺はそう言うと、制服を脱いで胸の傷跡を見せる。


「えっ?!」


「俺さ、小6の時に心臓移植をしたんだよ。それでこの心臓をくれた人が誰なのかずっと知りたくて、お礼が言いたくて調べたんだけど見つからなくて諦めかけてたんだけど、この前信じられないかもしれないけど吉川さんの記憶を夢で見たさ、その時小さい桜井もいて2人で楽しそうにしてた」


「う、嘘よ!そんなのありえない」


桜井は口を手で押さえながら必死で泣くのを我慢している。


「嘘じゃないさ、夢の中で桜井がよくボールで遊んでいた事や誕生日にその髪飾りをもらった事、そしてご両親が離婚して離れ離れになってしまった事、あの日桜井を庇ってトラックに轢かれた事まで見たんだから」


「本当に、貴方の心臓はお兄ちゃんのなの?」


「ああ、間違いないよ」


俺がそう言うと、桜井は俺の胸に顔を埋めて泣き出した。


「うぇーん、うえーん、ごめんなさいお兄ちゃん、私、私のせいでお兄ちゃんが・・・うう、ごめんなさい」


授業のチャイムが鳴るがずっと泣きっぱなしの桜井に、声をかける事ができず俺はずっと桜井を抱いてあげていた。


しばらくたち、ようやく泣き止んだ桜井は申し訳なさそうにこちら見て口を開く。


「それで鏑木君、どうしてお兄ちゃん、いや兄が私の事を心配していると分かったの?」


「その事だけど、実は昨日までは桜井を見ると何故か心臓が張り裂けそうになる程早く動いたんだよ」


「そうだったの、でもそれなら兄は私の事を恨んでいるんじゃあ?」


「それは違うさ!だって夢で見た記憶には桜井の顔だけははっきりと見えたし、声も聞くことができた。それに事故の後ずっと桜井の事だけを見ていたからね」


「そう、ありがとね鏑木君。君のお陰で私、ずっと苦しかった事からようやく救われた気がするわ!」


「そう、それはよかったよ!俺もどうやら発作が無くなったようだしね」


「それはよかったわね・・・ねぇ鏑木君」


「なに、桜井?」


「もし良かったら私とお、お友達にならない?」


「?もちろんいいよ!」


「ありがとう鏑木君!これからよろしくね」


「うん、こちらこそよろしくね桜井」


こうしてはれて、俺と桜井は友達になった。



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俺の心臓が語りかける。同級生のあの子を見ると何故か心臓が張り裂けそうになる理由を誰か知っていますか? クリームメロンパン @Mutenka4649

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