第76話 二十四年間の後日談完結


 今回は腰に傷を負った望月葵陵と日下部美鈴の事を書きます。時間は美鈴が葵陵を差した後の所まで遡ります。六十一話、六十四話をもう一度読んで頂くと分かり易いかなと思います。

この後立花隼人視点でまとめています。


―――――


 俺は、自分の失態で婚約者から腰を刺され車椅子状態になっている。幸い脊髄は一部傷ついただけで、リハビリで何とか杖をついて歩く程度には回復すると聞いている。


車椅子を押しているのは当時婚約者だった日下部美鈴だ。警察から彼女を起訴するか聞かれたが、当然自分の失態であり彼女に原因は無いという事、心身喪失状態で有った事等を理由に挙げ起訴しないと言ったが、殺人未遂事件として検察から起訴された。


 検察としては、美鈴に殺人の意思が有ったと強く主張したが、弁護側は、俺が躓いた事による事故であり、俺自身が起訴するつもりがない事、美鈴の深い後悔の念等を理由に過失傷害を主張した。結局弁護側の主張が認められ罰金三十万で結審した。


 その後俺は実家の病院に帰った。美鈴は大学を卒業するまで東京に居させその後、こちらに来た。

 彼女の左手小指には結婚指輪が光っている。


「葵陵さん、担当医が後一週間もすれば杖で歩く練習が出来ると言っていました。楽しみですね」

「俺はお前が車椅子を押してくれている方が嬉しいけどな」

「だめですよ。もうほとんど治っていると言っていましたから」

「そうか、それは残念だ」


 この体ではメスを持つことは出来ない。だが病院経営は出来る。父親は医院長兼外科医師として病院を盛り上げてほしかったようだが、これでは仕方ないとして経営に専念させると言っていた。

ここには優秀なスタッフがいる。どうにかなるだろう。


 日下部教授は娘の件で副医院長戦から完全に外れた。外科部長の椅子はまだ安泰だが、ライバルが医院長になった時点で無くなるだろう。

だが、まだ時間はある。その間に色々画策する様だ。俺には向かない世界だな。





ここからは立花隼人視点になります。


 素世が一番目に産んでくれた子供は男の子だ。素世に似ているからいい男になるだろうと期待している。

 そしてなんとそれから二年後に女の子を、更に三年後に男の子を産んでくれた。お義父さんとお義母さんは、大そうな喜びで、事あるごとにこちらに来ては孫と遊んでいる。


 俺に長男が出来てから三年後、ちょうど如月(旧姓金田)一郎がAIの研究を外された翌年星世が女の子を産んだ。あいつも忙しさが和らいで、する事をしていたからかもしれない。


 長男は日本の事を意識して小さい頃から日本語を覚える様にさせているが、下の二人は全く話せない様だ。子供達曰く『エレメンタリーでは日本なんてみんな知らない。パパとママだってドメスティックラング(米語)じゃない』と言っていた。

お義父さんとお義母さんがこちらに遊びに来て子供達と話していると、早口で単語を半分も発音していないから何を言っているのか分からない時があると笑いながら言っていた。


 日本にはまだ連れて行っていない。まだ小さいからだ。次男がジュニアスクールに入る頃一度連れて行こうかと思っている。



 俺もコロンビア大学で客員講師をしてから十年になる。ブルー教授が教授の椅子が用意できると言ってくれた。嬉しい事だ。学会へは毎年何本かの研究発表をしていてそれなりに立場も出来た。


 素世は子供の世話の合間に医師免許を取得して最初から務めている病院で内科医師として勤めている。


 素世は星世と良くビデオ会話をしている様だ。一郎は、元の会社を辞めて日本の物流会社のIT部門に転職したと聞いている。星世とは別れていないが如月家とは縁がない様だ。


 星世も子供を産んだとは言え、立派に内科医師として勤めている。いずれ医院長として立派に仕事するようになるだろう。


 さて、俺は困ったものだ。結局如月病院経営者代表いわゆるCEOをやらされる羽目になった。コロンビア大学で教授をしながらそれをするのは大変だと言ってブルー教授に相談したら、隼人が出来なくて誰が出来ると笑っていた。





 それから十二年経った。


 もう、如月医院長は実質引退して医院運営のほとんどを星世がするようになっている。息子もコロンビア大学に入学した。東都大とこことどちらにするか悩んでいたようだが大学を卒業するまではこちらに居たいらしい。


 何度か、日本にも連れて行き、星世の娘とも会わせたが、仲が良さそうだ。その姿を見てお義父さんが嬉しそうに笑っていた。

 

 お義父さんとの約束、素世と結婚する時の約束は何とか守れそうだ.





―――――


如何でしたでしょうか。本編が終了し、後日談も書かせて頂きました。当初二十四年間全部書こうと思いましたが、こういう綴じ方もありかなと思っています。

 実際、書いていて自分でも頭の中に有った気になる部分が綺麗に出せたかなと思います。

この話を投稿した時点でこの小説を完結にさせて頂こう思っています。


 長い間、本作を読んで頂いた読者の皆様、本当にありがとうございました。



並行して投稿している作品も同時にお読み頂ければ幸いです。

「フツメンの俺に美少女達が迫って来る。なんで?!俺は平穏に学校生活送りたい」


面白そうとか、次回も読みたいなと思いましたら、ぜひご評価頂けると 投稿意欲が沸きます。感想や、誤字脱字のご指摘待っています。

宜しくお願いします。

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目立たない俺が可愛い女の子に恋をした @kana_01

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