クソデカ猿夢
紫 和春
クソデカ猿夢
私は夢を見ていました。
これは明晰夢である事を本能的に感じていました。
私はなぜか、太陽なんて比にならない程まぶしい、東京駅よりも立派なターミナル駅に居ました。
そこにはあちこちをありえない速度で駆け巡る数百万人の姿がありました。
なんとも陽気な夢だなぁと思いました。
その時、DJでも出さないような高音で叫ぶ男性の声が響きました。
「まもなく電車がキヤス!!!その電車に乗れば、ものすっっっっごいことが起きますよ!!!」
このように、意味不明な内容でした。
すると目の前に、マッハ3で突入してくる1000両のリニアモーターカーが、螺旋旋風拳をかましながら滑り込んできました。
それはリニアモーターカーというにはおこがましい程、ギンギラギンにさりげなく、4千万カンデラで光り輝く円柱状のゴリラ電車でした。
その中には、血など最初からなかったと言わんばかりの、顔面蒼白の男女が300列に並んで座っていました。
私は、自分の夢がどれだけ自分自身に耐えられるか試したくなり、その電車に乗りました。
私は、電車の後ろから300両目に乗りました。
あたりには火傷しそうなほど高温の空気が流れていました。
本当に夢なのかと思うくらい、リアルな臨場感でした。
「ダァシエリイェス!!!!!ダァシエリイェス!!!!!」
そのようなアナウンスが流れ、電車は99999999m/s^2で出発しました。
私は、一体何が起こるのだろうと、期待と不安でドキがムネムネでした。
電車は、出発するとすぐにブラックホールより深淵のトンネルに入りました。
トンネルの中は、熱狂したダンスフロアのようにカラフルな照明がトンネルの中を超高速で照らしていました。
その時、私は思い出しました。これは私が産まれて1マイクロ秒の時に乗ったスリラーカーの景色だと。
(この電車だって、遥か彼方の過去の記憶を持ってくるだけで、マジで全然怖くないや)
と思っていました。
その時、アナウンスが流れました。
「ツギャ活け造り!!!!!活け造りデェス!!!!!!」
魚の活け造り?なんて思っていると、急に後ろから鼓膜が破裂するほどのけたたましい悲鳴が聞こえてきました。
振り向くと、一番後ろに座っていた男性の周りに、4000人のパツパツなタンクトップを来たゴリラのような巨人が、コバエのように群がっていました。
よく見ると、男性は日本刀で体を引き裂かれ、1千万枚に切り裂かれていました。
周囲を鼻がひん曲がるほどの強烈な臭気が半径100kmに渡って包み込み、男性は脳震盪を起こすほどの悲鳴を上げ続けました。
男性の体からは、5000個の内臓が取り出され、血まみれの臓器が散らばっています。
私のすぐ後ろには、全身を覆い隠すほどの毛量を蓄えた、正直生理的に拒否反応を引き起こす女性が座っていましたが、すぐ後ろで男性が悲鳴を上げているのに、気にも留めていませんでした。
想像をマジで超えるほどの強烈な展開に、私は驚きました。
そして、もう少し様子を見てから、目を覚めようと思いました。
気が付くと、後ろの男性はいなくなっていました。しかしそこには、高さ100mに及ぶ血と肉のようなものが転がっていました。
「ツァギハ抉り出し!!!!!!!抉り出しディス!!!!!!!」
そのようにアナウンスが流れました。
すると今度は2万人の巨人が、アホみたいにギザギザのついたスプーンのようなもので女性の目玉をえぐり出し始めました。
その瞬間、女性の顔は鬼の形相で、衝撃波を発するほどの悲鳴を上げました。血と汗のにおいがとてつもなくたまりません。
私は恐くなりバイブレーションのように震えながら、前を向き、体をかがめていました。
ここが潮時だと思いました。これ以上付き合いきれません。
私は夢から覚める前に、どんなアナウンスがされるのか、確かめてから超逃げることにしました。
「ツィギハミンチィ!!!!!!!ミンチィディス!!!!!!!!!!!!」
とんでもなく最悪です。
夢から覚めようとしました。滅茶苦茶強く念じることで、夢から覚めることが出来ます。
急に「ウィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィン!!!!!!!!!!!!!!!」という機械の音が聞こえてきました。今度は巨人が、私の全身に乗りかかり、機械みたいな物を近づけていました。
私をミンチにする道具だと思うと、怖くなり(夢から覚めろ、覚めろ)と目をつむり、命の限り念じました。
「ウィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィン!!!!!!!!!!!!!!!!!」という音がだんだん近づいてきて、顔に暴風雨並の風圧を感じ、もうぴえんというところで、宇宙のように静かになりました。
何とか、悪夢から抜け出すことが出来ました。全身汗でナイアガラの滝のようにビショビショで、目からは毎秒20Lの涙が流れていました。
私は寝床から台所に向かい、水をありえない程大量に飲んだところで、やっと落ち着きました。
ありえんほどリアルだったけど、所詮は夢だったのだからと自分に5000回言い聞かせました。
次の日、学校で会う友達4000人にこの話をしました。しかし、皆は面白がるだけでした。所詮は夢だからです。
それから400年間が過ぎました。エリート大学生になった私は、こんな事を忘れ、本職なんぞに勤しんでいました。
そしてある晩、急に始まったのです。
「ツァギハ抉り出し!!!!!!!抉り出しディス!!!!!!!」
あの場面でした。私はあの夢だと、すぐに思い出しました。
すると、前回と同じで、2万人の巨人が女性の目玉を抉り出しています。
とにかくヤバいと思い、すぐに念じ始めました。
(夢よ覚めろ、覚めろ、覚めろ)
今度はなかなか覚めません。
「ツィギハミンチィ!!!!!!!ミンチィディス!!!!!!!!!!!!」
いよいよやばたにえんになってきました。
「ウィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィン!!!!!!!!!!!!!!!」と近づいてきます。
ふっと静かになりました。
どうやら、なんとか逃げられたと思い、目を開けようとした時、
「マァタ逃げるンデスカ!!!!!???????あと5千回はヤァリアスオ!!!!!!!!!!!!」
とあのアナウンスが耳の穴かっぽじったように聞こえてきました。
目を開けると、夢からは完全に覚めており自分の部屋にいました。
最後に聞いたアナウンスは絶対に夢ではありません。現実の世界で確かに聞きました。
私が一体何をしたというのでしょうか?
それから現在までまだあの夢は見てませんが、次に見たときは確実に特発性拡張型心筋症か何かで死ぬでしょう。
こっちの世界では特発性拡張型心筋症でも、あっちの世界ではミンチです。
クソデカ猿夢 紫 和春 @purple45
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます