第23話 出会い
「っててて…。って、あれ?」
体が動く…?
手が、見える?
体が言うことを聞くこの感覚。
俺もしかして…
「いや誰えええ!君誰?ねえ誰なの?どこの誰?」
隣のイケメンくんが驚いた顔で俺を指さしてくる。
もしかして、この人って…
「浦島…さん…?」
「何故僕の名前を…?
えっ、もしかして亀?
いやオオカミ?
えっ人間?」
なるほど。
どうやら俺はついに人間になってしまったようだ。
クシャッ
俺は左手で紙を握りしめていた。
ーーーーーー指令①
ようこそ、2032年の日本へ。
と、言いたいところですが私はそちらの世界に姿を現すことはできないのでこのような形で失礼いたします。
これからあなた方には人間として生活していただきます。
その上で必要な個人情報、つまりオオカミさん、いや
履歴書に記入することなどもあるでしょうから大事に保管されるといいでしょう。
そして今あなた方のいる部屋が大上さんが暮らしていくお部屋となっております。
このマンションではお隣に浦島さん、いえ
さあここから本題の本日の指令になります。
あなた方には3ヶ月後に迫るアイドルオーディションに挑戦していただきます。
しかし私どもはオーディションに関与することは一切できかねませんので合否についてはあなた方次第、といったところでしょうか。
と、言いつつもこのまま野放し、と言うわけにもいかないので最低限の生活必需品、そして3ヶ月程度は暮らしていける程度の資金は用意いたしました。
ですからそれ以降の費用についてはご自身で工面されるようお願いいたします。
言い忘れましたがあなた方は現在15歳です。
そうです、高校生なのです。
ですから学校に通われながらアルバイトでもされて、アイドルを目指される、こういったプランになります。
高校の勉学については裏縞さんはもちろんのこと、大上さんは日本語の読み書きからの習得となることでしょうからお家でしっかりと勉強される必要がございます。
幸運にも昨日、夏休みというものが始まったばかりでございますので、この1ヶ月半程度を使って勉学に取り組まれてはいかがでしょうか。
もちろん、仮にアイドルになられたとしても高校生としての合格点もとらないとミッションクリアとはなりませんので御注意を。
ちなみにクラスメイトの皆様や先生方にはお二人が4月から高校に通われているという風に思っていただけるよう、記憶を書き換えておきましたのでくれぐれもお忘れなきよう。
それでは長くなりましたが、微力ながら応援させていただきます。
また次の指令でお会いしましょう。ーーーーーーーーーー
俺は浦島さんと顔を見合わせた。
「浦島さん、あの、これ…」
「うん、そうだな、なんというか…」
「これ読んでもらってもいいですか?」
「読めないのか!
こりゃ前途多難じゃあ!」
とまあいきなり出鼻を挫かれた俺だが、これくらいではへこたれない。
全てはかぐや姫のため。
オオカミだった俺は亀になったはずだったんだけどどうやら浦島太郎とアイドルになるらしい。 御手洗レン @mitarairen3100100
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