何故、牛や豚は食用で、犬や猫は食用ではないのか?
@HasumiChouji
何故、牛や豚は食用で、犬や猫は食用ではないのか?
逃げた。
逃げた。
必死で逃げた。
「待て〜ッ‼ ワンちゃん達の未来の為に、大人しく死ね〜ッ‼」
俺は、バイク用のプロテクターに似た服を着た……いや、より端的に言えば、特撮モノの変身ヒーローに思えぬ事も無い変なコスプレをした男から必死で逃げていた。
ちゅど〜ん♪
たまたま前方に居た……どこかの他の学部の教授らしき人が、謎の攻撃により粉々に吹き飛んだ。
「何故、俺の攻撃を避けた? 何故、大人しく死なんッ? あの御老人が死んだのは、お前のせいだ。全世界のワンちゃん達を地獄に突き落すだけでは足りずに、関係ない罪のない人まで殺すとは、何と云う極悪人だッ‼」
「阿呆かああああ〜ッ? 殺したのはお前だろッ‼ そもそも、お前、誰だ? ワンちゃんって何の事だッ?」
その日、俺は大学の研究室のPCで、卒論そっちのけでSNSを眺めていた。
SNSでは、ヴィーガンらしいヤツが書いた「何故、牛や豚は食べるのに、犬や猫は食べないのか?」と云う書き込みが炎上していた。
それに対して、俺は、こう返信をした。
『そりゃあ、犬や猫は食える部分の割合が、牛や豚に比べて小さいからに決ってるだろ』
まぁ、これも他の誰かが書いてる事のコピペだが……。
その時……。
「古川リョウ、居るか〜ッ⁉」
絶叫と共に、研究室に入って来たのは……謎のコスプレ男だった。
若禿ぎみの同僚が俺の方を見た途端……そのコスプレ男はオモチャのような外見の銃らしき何かを同僚に向け……。
音もなく発射されたらしい「何か」のせいで、同僚の体は粉々になった。
「しまった〜ッ‼ 間違えた〜ッ‼ 古川リョウの頭が禿げたのは齢を取ってからだったぁ〜ッ‼」
俺にとっては非常に残念な事に、ヤツが狙っている「古川リョウ」とは俺の事だ……。同姓同名のヤツがたまたま近くに居るんなら話は別だが。
「顔認識アプリ起動。……貴様が本物の古川リョウかぁ〜ッ‼」
そんなモノが有るなら、最初から使えッ‼
いや、この阿呆な殺人鬼が最初から使ってなかったから、俺が逃げる隙が出来た訳だが……。
「待て〜ッ‼ 逃げるな〜ッ‼ 大人しく死ね〜ッ‼」
気付いた時には日は暮れ、大学の構内と、その周辺は廃墟と化し……周囲には、穴だらけになったパトカーに自衛隊の装甲車が転がっていた。
俺も、俺を追っている謎のコスプレ男も疲れ果て……そして、立ち上がる事さえ出来なくなっていた。
コスプレ男は、俺に銃……少なくとも銃としての機能を持つ「何か」を向け……。
「弾切れか……くそ……」
「何なんだよ、お前は……?」
「未来から来た愛犬団体の者だ」
「はぁッ?」
「お前は……大学を卒業し……社会に出て、画期的なペット・ロボットを生み出す。そのせいで、全世界のワンちゃん達が悲惨な目に遭う事になる。それを阻止しに来たんだ」
「何を言ってるんだ?」
「見ろ……これが……俺達の時代のワンちゃんだ……」
「えっ?」
ヤツは……現代のスマホの「子孫」らしき
そこに映っているのは……微かに「犬」の面影が有る……けったいな姿の肉の塊……。
「な……なんだ……このグロい代物は……?」
「だから、言っただろ。俺の時代のワンちゃんだ。何世代にも渡って人間が食用に出来る部分の割合を増やす品種改良が行なわれてきたんだ」
「待てよ、どうなってんだ? 訳が……」
「お前が研究室のPCからSNSに書き込んでたのと同じ事だよ」
「はぁ?」
「牛は食える部分の割合が多い……そう云う意味の事を書き込んでたな」
「あ……確かそうだけど……それが……」
「元から牛は、そう云う動物だったのか?」
「えっと……」
「人間が牛を飼う目的は、元々は、力仕事をさせる為、乳を取る為、食用肉の為だった。そして、近代以前は……『食用肉の為』の牛の割合が最も小さかった。だが……文明の発達で、力仕事をさせる為の牛は減り、代りに食用肉の為の牛が増加した。そして、食用の牛には、人間が食える部分を増やす品種改良が行なわれていった」
「お……おい……。えっと……俺が、将来、ペット・ロボットを発明するとか言ってたけど……その……」
「まだ、判らんか? お前が発明するペット・ロボットのせいで……俺達の時代には、ワンちゃん達には『ペット』としての用途が無くなり……代りに……人類史の大部分において人間のかけがえのない友だったワンちゃん達は……『食肉用の動物』になってしまったんだよッ‼」
何故、牛や豚は食用で、犬や猫は食用ではないのか? @HasumiChouji
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます