病弱な少女のユースティアは、両親からの「おつかい」で、しゃべるお手紙「ガイドさん」をお供に、地下深くへと降りていく。そこで出会う三人の妖精は、それぞれ正義の話をしていて……というストーリー。
ガイドさんが解説してくれた、妖精たちの正義論が好きです。
本作を開いてまず驚くのは、1F:いりぐちが完全に児童向けのやわらかな文体で書かれているところ。他作品を見ると、元々そちらの道を志しておられる方のようですね。この調子で全編続くのかな? と少し期待したのですが、ガイドさんが登場すると文体が変わります。
その新しい文体でも、海外児童文学か何かの翻訳のような独特の語り口です、なんだか挿し絵に描かれるユースティアの姿が思い浮かぶようでした。絵画で繊細に描かれた、頬がぷっくりした白人の女の子、そんなイメージです。
こうした児童文学として読むのは大変面白かったのですが、やはり私は「はじめに」に書かれていることがどうしても引っかかりました。作者さまは一体何を危惧されているのだろう? そんなにおかしな、過激なことを言っていない気がするけれど、それを語ることが間違いなのだろうか?」と。
書くべきか書かざるべきか迷ったのですが、改めてこのレビューの場で、「正義を思索するとはそれほどに繊細に気を遣うべきことなのだ」とこの作品で学ばせていただきましたこと、告白いたします。
興味深い作品をありがとうございました。