言葉が綺麗に組み立てられていて、様々な感情が感じられる散文詩でした。切り取った景色は些細なもので、ふとした瞬間、とても短い時間、あまりに小さくて言葉にならない、そんな一瞬のことばかりです。しかしその一瞬の中で感じる小さな心が、丁寧に大切に描かれています。
そこに広がる鮮やかな世界のなんと素晴らしいことか。
特に私が驚いたのは「詩的な余白」の書き方です。
散文詩というのは散文的な詩であり、詩的な散文です。なのでその表現は詩の世界だけにとどまらず、自然とその外側の景色にまで及ぶことになるのですが、この外側に必然的に発生するのが「余白」です。
この「余白」は案外扱いが難しく、作家さんによってはあまり書かないようにしている方もいたりします。しかしこの作品ではそんな「余白」をキッチリと書いていて、尚且つ素敵に表現することで作品全体を印象づけていました。
追加付加的な要素を下地にしながら、作品の視点自体は主人公にあてる。そうすることで不完全なままの「余白」を私達の想像で補うことが可能になり、作品の広い世界が私達読者の想像の中で完成されて、その中心に立つ主人公の心がより強く感じられるようになっているのだと思います。
これは本当に凄いです。
到底真似できることではありません。
これが55話もあるのですから、嬉しい限りですね。
ここまで表現に絞って書いてきましたが、もちろん内容も素敵なものばかりです。この「アンサーソング」を返す相手がいるということも、この作品を素敵だと思う理由だったりします。
みなさんもお時間ありましたら、是非読んでみては如何でしょうか。
とてもオススメです。