届かぬ怨み

白黒 ものくろ

届かぬ怨み

 朝の教室に暗い表情をした担任が入ってきたと同時に、私は机から顔を上げた。

「〇〇さんが亡くなりました。」

 担任のその話を聞いて教室の空気は張り詰めた。周りの人たちからすすり泣きの声や、驚きの顔がうかがえる。でも私はそれらがすべて取り繕った演技だということを知っている。みんな心の中では弔いの思いなど、微塵もないことも。

 長い担任の話が終わったタイミングで、クラスの中心の女子生徒一人を担任が呼んだ。

「私の担任というの立場からみて、君が一番〇〇さんと仲が良かったから、お葬式に参列してもらえないか?」

彼女は故人を偲ぶ悲しそうな表情をしていた。声が小さくて聞こえなかったが、担任のお願いを受けたらしい。私自身もあの彼女と関わりが深く、思うことが色々あった。担任と話が終わったらしく彼女は席へ戻るために振り返った。彼女の表情はさきほどの表情と真反対だった。私も彼女に言いたいことがあり、席から立ち、彼女の前に立ちはだかった。そして彼女の顔を見て、

「ワタシガシンダノハ、オマエノセイダ」


彼女は気にもせず気持ち悪い笑みを浮かべながら私自身を通り抜けていった。


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届かぬ怨み 白黒 ものくろ @Monokuro2003

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