終末の日、だった気がする九月
大和田 虎徹
終末の日、だった気がする九月
「続きましては、先月より接近している巨大隕石についての近況です」
九月の中頃、近く地球は終わるらしい。八月の下旬に、地球に接近している超巨大隕石が世界を滅ぼせるほどに、大きいらしい。恐竜の絶滅と同様に、人間の絶滅も隕石によるものになるのだとか。
そんなこんなで、学校も会社も公共機関も止まっている。妹の通っている学校では、教職員が「ありえないのだから」と誰もいないのに授業をしているらしい。妹も妹で図書室に居座って三食全部ナポリタンにしているとか。図書室で飯を食うな。
外も、カオスが極まっている。訳のわからない宗教団体が救済を施しているし、その施しで人が死んでいる。施しを妨害しようとパンツをぶん投げている奴もいる。どうしてパンツなのだろうか。隣には腕に靴下をはめた女装趣味の男もいる。なにもかもがよくわからない。いわゆる「何なのだこれは、どうすればいいのだ」というやつだ。
かく言う俺も、仕事場が地獄絵図と化してしまったので一日中ゲーム三昧だ。上司の田口がケツにエアーコンプレッサーを突っ込んで病院送りになったのだ。どうして実行したんだ。なぜ尻に圧縮された空気を挿入しようとした。世界が混乱しているにも限度がある。
海外に目を向けると、もっとおかしなことになっている。飛び降り自殺者は爆弾をくくりつけて飛び降りているらしいし、全裸男は大抵どこの国にも出てきている。何なら全裸女も幾人か発生している。世紀末とはまさにこのこと。もしくは地獄絵図。
「えー、わたくしの見解ですがね、この隕石は破壊自体は可能ではあると考えております。破壊自体は、現代の技術でできるんですよね」
「破壊以外が、まずいのですか?」
「ええ、ええ。隕石はかなり大きく、破壊したところで破片が出てきます。その破片もそこそこの大きさになるでしょう。つまり、ですね。破壊をすれば小さな隕石が雨のように降り注ぐことになるんですよ。被害は、隕石がそのまま落ちるよりも甚大な可能性もありますからね」
「では、我々はこのまま地球と心中するしかない、と?」
「ごくごく小さな破片になるようにうまく破壊すればあるいは、と言った具合でしょう」
「なるほど…」
どれもこれも机上の空論ではあるが、生存の確立を上げようと科学者が必死にシュミレートしている。それでも、隕石は無慈悲に近付いている。
終わりは近い、外の宗教家が絶叫している。まあ、隕石が影となり接近しているのだから終わりだろう。せっかくだから俺はゲームと心中することにしよう。
と、したとき。ニュース速報が入る。
「えー、たった今、地球に接近している巨大隕石が破裂しました。専門家の田中さん、これはどういうことでしょうか」
「えーこれはですね、えー地球の磁場や重力が影響していると考えられますが、最も影響が強いのは太陽フレアとガンマ線バーストでしょう。これらが丁度よく重なった結果、隕石の自壊につながったとするのが妥当でしょう」
なんてこった、まさか隕石が自分から壊れてしまった。それでも、破片が大きいので完全に元の生活には戻らないだろうが、世界は終わらなかった。
気分転換に外に出てみる。と、何の偶然か俺の家に隕石の破片が落ちてきた。そのまま、ガスに引火して爆発。地球は終わらなかったが、俺の家は終わった。
やけくそになって、俺は燃えさかる家に向かって叫ぶ。
「爆発オチなんて、さいってー!」
終末の日、だった気がする九月 大和田 虎徹 @dokusixyokiti
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます