第24話 希望


「ここは......?」


 気が付くとリカルドは雪山にいた。


 見覚えがある。ここは姉上と魔石を賜りにきた霊峰だ。つい最近なはずなのに何故か懐かしいな。


 サクサクと踏みしめる雪の感触もそのままだ。ただし冷たくはない。


 何の気もなく、リカルドはフラフラと泉を目指して歩き出した。




 ああ、ここも変わらない。


 以前来た時のままな泉。


 ちゃぷっとリカルドが泉に手を入れると、閃光と共に精霊王が現れた。

 驚くリカルドを柔らかく見据え、すうっと指を指す。つられて振り返ったリカルドの眼に、大きな影が見えた。

 身悶え、叫ぶように蠢く影。まるで泣いているかのようだ。


「あれは?」


《魔王だ。媒体となるそなたの命が失われ、嘆いている。媒体が無くば魔王として復活出来ぬからな。このままでは、この国全体が呪いに蝕まれよう》


 はぁん? ざまぁみろだ。


 人の悪い笑みを浮かべるリカルドは、はたっと現実に気がついた。


「僕は死んだのですね」


 泣き笑いのように苦笑し、彼は自分の両手を見る。

 その手には、ドリアを抱き締めた感触が、はっきりと残っていた。


《半分正解だ》


「半分?」


 訝るリカルドに、精霊王は頷く。


《ここからは運しだい。そなたの死に嘆くは魔王ばかりではないからな》


 言われてリカルドも察する。


「姉上....」


 間違いなく、あの美しい姉は泣いているだろう。

 リカルドの胸に、ツキンと鋭い痛みが走る。


《ほら、喚ばれた》


「喚ばれた?」


《我の祝福を持つ愛し子だ。正しく力の使い方を理解しておろう。そなたは、ここで待て》


 リカルドを泉に残し、精霊王は淡い光となって消え失せた。


「いったい何が....?」


 リカルドの呟きに答える者は誰もいない。




《選ぶのだな? 世界より、その青年を》


「はいっ!!」


 ドリアは大きく頷いた。


 顕現したるは世界を統べる一角、水の精霊王。


 旧くから公爵家を守護してきたジャックの説明で、精霊の祝福を受けた者は生涯に一度だけ精霊に願いを叶えて貰えると聞き、ドリアは言われた通りに額の魔石を大地に額づけ祈った。


 過去にサンドリヨンは、この方法を用いて魔王を紫眼に封じ込めたのだと言う。


 顕現した精霊王にどよめく周囲を無視し、ドリアはリカルドを生き返らせれるか精霊王に尋ねる。


 すると精霊王は可能だと答えた。


 ただしそれをすると、リカルドとドリアは旧き血族の資格を失うらしい。つまり魔王の番人が出来なくなり、禍々しい呪いが野に放たれる事になる。


「構いませんっ!! 世界がどうなろうと知った事じゃないっ!!」


「御嬢様っ??」


「待てっ、勝手に決めるなっ!!」


 慌てるジャックや、アンドリウス達。


 それを鼻で嗤い、ドリアは辛辣に眼をすがめた。


「だいたい、何で、あたしらだけがそんな重荷を背負わなきゃならないのさっ、元々は王子に降りかかった呪いだろう? ならば、熨斗つけて王家に返品するぜ」


 声高に叫ぶドリア。


 いや、全く正論なんですが、世界の危機だよ? 即答せずに、もう少し考えてよっ!!


 あんぐりと口を空ける人々を余所に、ドリアは精霊王を見上げて、はっきりと答えた。

 ジャックにいたっては放心状態である。精霊への祈りを教えたのは、魔王の呪いを新たに封じてもらうためだったのだ。

 まさかリカルドを生き返らすために使われるとは。斜め上過ぎて想像もしなかった。


「リカルドを返して下さい。二人で平民になり、王家に籍を返上します」


《良かろう。幸いな事に今なら形代もおるしな》


 形代?


 訝るドリアを抱き寄せて、精霊王は離宮地下にいるリカルドの遺体の傍へ転移した。


 そして彼が手を翳すとリカルドの身体が発光する。


 幾度か発光し、リカルドの身体が大きく痙攣してびくんびくんと跳ね上がった。


「リカルド?」


 心配気に駆け寄ったドリアの前で、青年は激しく咳き込みながら、うっすらと眼を開ける。

 涙眼を瞬かせ、リカルドはドリアを見つめた。


「姉上....? 僕は.... あれ?」


 死んだはずではなかったか?


「リカルド..... 貴方の髪」


「え?」


 言われてリカルドは前髪を見た。


 真っ黒な髪。瞳は茶色い。


 ふと見ると、ドリアも同じになっていた。とても貴族には見えない。これは平民の色だ。


《平民になると言うたでな。それで良かろう?》


 そして精霊王はキョロキョロと辺りを見渡し、未だに茫然と寝台に腰掛けたままな王太子を見る。


《いたな》


 にんまりとほくそ笑み、彼は離宮を覆うように嘆き苦しむ魔王を掌に吸い込んで、そのまま王太子の顔面に押し当てた。

 途端、王太子が硬直し、バタリと寝台に倒れ込む。

 半開きになった紫眼には、怪しい光が宿っていた。


《有るべき物は有るべき場所へ。王家に返そう。元々これが彼の者との盟約だ》


 残忍に微笑む精霊王。形代って、こういう事か。


 聞けば、彼の昔にも同じ事をしたそうだ。


 元々は王家への呪いだった。なのに王家は王子を切り捨て、公爵とし、呪いと封印の番人を押し付けたのだ。当然、王子は絶望する。


 それを救ったのが最愛の恋人サンドリヨン。


 オレンジ色の髪を持つサンドリヨンは、王家の落とし胤ではあるが、母親が平民で本人も平民だった。

 ただ違ったのは、彼女は予知が出来、精霊に祝福を貰った聖女だった事。

 貴族に落とされた王子に寄り添い、絶望から救った聖女。彼女もまた願ったのだそうだ。


 最愛の王子が幸福である事を。


 結果として、精霊王の手により、紫眼に魔王の呪いが封印されたため、王家からは生け贄のように紫眼の若者がミッターマイヤー家の養子となるはめになった。

 我が子を捧げてミッターマイヤー家に紫眼の若者を与えなくては魔王の封印が維持出来ない。

 新たな当主に封印を押しつけ、件の二人は心穏やかに暮らしたのだという。


 紫眼に呪いを封じ込む事。これが精霊王とサンドリヨンの盟約だ。


 ゆえにもしドリアが祈らなくとも、そのうちに精霊王が新たな紫眼に魔王の呪いを封じにやって来ていたらしい。


 なんともはや。えげつない話だ。どう足掻いても王家に呪いが返る仕組みになっている。


《愛する者のためなら、狡猾なヘビにもなる。それが女と言う生き物だ》


 王家を生け贄にしてた訳か。ある意味、自業自得だよな。


 ドリアは得心顔で頷いた。


《ミッターマイヤー家には、そなたら二人しかおらぬ。そなたらが平民になるならば、もはや御役御免よ》


 だから王家に返すのか。


《この者には魔力が殆ど無い。女を与え、係累を遺せば問題なく番人が務まろう》


 うは、種馬な一生ですか。まあ、見ようによっては男性の夢な暮らしかな。


 苦笑するドリアに、精霊王は慈しむような眼差しを向け、ゆうるりと微笑んだ。


《封印の紫眼の公爵と寄り添うそなた。まるで過去のサンドリヨンを見るような気持ちだった。こうなると分かっておった訳ではないが、祝福を与えておいて正解だったようだな》


 言われてドリアは頬に朱を走らせる。


 それを見逃さず、リカルドは剣呑な眼差しで精霊王を睨めつけた。


 精霊王は喉を鳴らして笑う。


《我は命の恩人ぞ? 良い態度だな》


 そう言うとリカルドに近づき、蘇生されたばかりで、まだ力の入らない彼に深く口づけた。

 思わず眼を見開き、精霊王を凝視するリカルドに悪戯気な顔を向け、精霊王は彼から離れる。


《我の手向けだ。受け取るが良い》


 リカルドの額には親指大の紫の魔石が浮き出していた。


《人間らへの説明は、そなたらに任せる。では、息災にな》


 そう言うと精霊王は一迅の突風となり、吸い込まれるように空の彼方へと消え去っていく。

 唖然と空を見上げるドリアの耳に、低い唸り声が聞こえた。


「あっ...んの野郎っ、姉上のみならず、俺にまでマーキングかよっ、ふざけんなっ」


 いやいや、高貴なる尊い存在からの祝福をマーキングて..... リカルドらしいなぁ。


 ドリアは破顔し、リカルドの身体が動けるようになるまで休むと、王太子を連れて地下から出る。

 ドリアが精霊王と消えたため、外はてんやわんやの大騒ぎ。

 無事に現れた三人に安堵しつつも、事の詳細を聞き、複雑そうに眉を寄せた。


「これはもう隠しておくべきじゃない。ちゃんと公開して、正しく隔離すべきだ。王家の手でね」


 万一用に作られた、この離宮なら隔離に相応しいだろう。

 この先、王家がどのようにするかは分からないが、ドリア達は平民になる気満々なので、後は知らん。


 ふんすっと胸を張るドリアを、後ろからリカルドが抱き締めた。

 青年になった彼は、とうにドリアの背丈を越えている。

 頭一つ分以上大きくなったリカルドを不思議そうに振り返り、彼女は微笑んだ。


「大好きよ、リカルド」


「姉上.... いや、ドリア。愛してる」


 どちらともなく顔を寄せ、口付ける。


 そんな二人から、周囲はそっと眼を逸らした。


 リア充、爆ぜろっ!


 眼を逸らした人々の数割は、そんな事を思っていたが、ドリア達は知らない。




 怒涛の日々が過ぎ、渦中の人々は上を下への大騒ぎ。


 公爵家の二人が王家の色を失い、番人が出来なくなった事を皮切りに、その封印が王太子に移動した事。

 緊急用の転移魔法が発動していた事に気づいていたにもかかわらず、隠蔽し王家は知らぬ振りをしていた事。

 おかげで救出が遅れ、リカルドが酷い目にあったのだが、青年化したさいに全身治癒されたので、この件は不問にする。


「王家に貸しだ。醜聞だしな。....いずれ返してもらうさ」


 陰惨に口角を歪めるリカルドの顔は、成長してさらに美貌が増したため、凄まじい凄味があった。


 整った美丈夫の悪巧み顔って最高~っっ、とフランソワーズが見悶えていたが、見なかった事にしよう。


 王太子に封印を押しつけた事に対し、公爵家を処罰と言う話もあったが、王太子自身が誘拐、監禁、傷害の加害者である。

 これはアンドリウスやヨシュアが目の前で見ていたので証言してくれた。

 証言された酷い拷問の内容に人々は血の気を失い、王妃は失神。国王は真っ白な蝋燭のように微動だにしない。

 控える家臣達も絶句し、恐々とリカルドを見つめていた。


 今でこそ青年の姿だが、拷問当時は十歳ほどの身体だったはず。その彼に証言のような暴行を平気で加えたとなれば、王太子としての資質は皆無だ。廃嫡待ったなしである。


 こうして王太子は廃嫡され、公爵家の離宮に生涯幽閉となった。


 そこに封印の番人の家系を新たに作るらしく、幽閉された王子の元には何人もの女性が慰めに訪れているとか。


 まあ、ドリア達の知ったこっちゃないが。


 もう、二人は見てくれからしてただの平民だ。事のしだいがつけば市井に降りると話したところ、物凄い勢いで王家からストップがかかる。

 今は黒髪だが、元は王家の色を持っていたのだ。二人の子供らに継承されないとは限らない。


 しばらくは..... せめて最初の児が生まれるまでは公爵家の者として暮らして欲しいと懇願された。


 言われて見れば、ドリア達は後一年で学院卒業である。

 卒業してから市井に降りても遅くはない。


 ドリアはそう思っていたが、表向きには承知したリカルドが、実は納得していなかった事を後で思い知る。


 ドリアが入浴中の浴室に入ってきたリカルドは、切れるような眼差しでドリアを見つめた。


 無論、全裸で。


「もう限界なんですよ、姉上。奴等が子供を見たいと言うなら見せてやりましょう」


「え???」


 惚けるドリアを屈強な腕に捉え、彼女を抱き締めたまま自分の入浴も済ますと、リカルドはドリアを抱き上げ、寝室のベッドへ投げ込んだ。

 成長したリカルドは強靭な体躯を持ち、その眼は淫猥に潤み、熱い情欲を滾らせている。


「成長したせいですかね..... 熱くてどうしようもなくて...... 姉上、鎮めてください」


 えーーーーーーーーーっっっ


 真っ赤になるドリアに覆い被さり、その夜、リカルドは長年の本懐を達した。


 達したどころではなく、二日に渡り睦み続け、失神したり、気を失ったりするまでドリアをなぶり、時折食事くらいは摂らせるものの、日がな一日抱き締め、貫き、絡まり続けた。


「ここに..... 早く新しい家族が出来ると良いな」


 ドリアと繋がったまま、リカルドは何度も愛おしそうに彼女の腹部を撫でた。

 うっとりとしたその眼差しに苦笑し、ドリアは至福を感じる。

 ようやくリカルドは彼を長年縛り続けてきた呪縛から解放されたのだ。


 こんな嬉しい事はない。


 後日、一週間ほどドリアの腰が立たなかったのは御愛敬だろう。


 餓えたお猿な十六歳である。


 毎日のように激しく睦む二人だが、一向にドリアが妊娠する気配はなかった。


「なんで? あんなに胤を流し込んでるのにっ??」


 赤裸々な恋人同士の営みを声高に叫ばれ、ドリアは思わず赤面する。


 まあ、理由は分かってるけどね。


 訳知り顔な彼女は、雄叫びを上げる恋人からそっと眼を逸らし、チラリと赤い舌を出して唇を舐めた。




 そうこうして一年が過ぎた頃。ようやくドリアの妊娠が判明する。


 狂喜乱舞して喜ぶリカルドだが、自分の胤は弱そうだと、微かに落ち込んだ。


 そこでドリアはネタばらし。


「逆よ。リカルドが落ち着いたから妊娠したのよ」


 ふわりと笑うドリアは、含むような眼差しでリカルドを見つめる。


 何の事はない。リカルドの行為が激しすぎたのだ。


 毎日のように子宮を突かれ抉られされていれば、受精しても着床する訳がない。

 しかも散々ドリアを極まらせるのだ。子宮が縮小し、子供が安心して住める部屋ではないと身体が判断するのである。


 仲睦まじいほど子供は出来にくい。こういった諺もあるくらい、市井では常識的な話だった。


 そんなこんなで妊娠は無理だろうなと、ドリアは薄々感づいていたが、黙っていた。

 いずれ落ち着き、行為も穏やかになるだろうと。


 まさか、一年もかかるとは思わなかったが。


 話を聞いて、リカルドは惚けた。


「えと.... つまり? しばらくはやれない?」


「そうよ。あんなに激しく突き上げられたら、せっかくの子供が流れてしまうわよ?」


「どのくらい? ずっとじゃないよね?」


「そうねぇ。安定期まで最低でも三ヶ月かな」


「えーーーーーーーーっ!!」


 しれっと話すドリアが悪魔に見える。


 やりたい盛りな十六歳は、泣く泣く睦みを諦めた。己の欲望より、子供が大事である。これ当たり前。


 それに比例するかのようにリカルドは過保護になり、ドリアに対する溺愛が増し、既に学院卒業済みな彼女の傍から離れなくなった。


「リカルド、貴方の学院は?」


「行かない。姉上が心配」


 ドリアは溜め息をつく。


 お腹が目立つようになってからのリカルドの過保護は常軌を逸していた。

 食事も手ずから、着替えも侍女を入れずリカルドが着せられる寝間着のようなゆったりとした物に替え、ドリアを歩かせもしない。

 何処に行くにもついてまわり、抱き上げる。

 飲み物以外は全てリカルドの手からしか食べられない。カトラリーは取り上げられた。

 何でも、魔法で浄化しているらしい。飲み物は最初から浄化済みだとか。

 用を足すのすら同室したがる。とにかく一人にしたくない、一緒にいたいようだ。


 さすがにトイレの中までは御遠慮いただいたが、扉の前で仁王立ちするリカルドには呆れるばかりである。




「俺がいない処で何かあったらどうするのさ。俺が見てない処で..... 嫌だよ、そんなの」


 膨れっ面なリカルドを微笑ましく見つめ、ドリアはリカルドの好きにさせた。

 元々、彼は卒業までの単位を取得済みなのだ。無理して通う必要はない。

 高等科の更に上、研究院へ進んだのも、リカルドの魔術研究を止めさせたくない、国からの計らいであった。


 そうこうする内に月日は流れ、ドリアは男の子と女の子の双子を生んだ。


 そして公爵家の二人は、眼を据わらせる。


 生まれた子供達は、オレンジ色の髪に黄昏色の瞳だったのだ。

 見てくれは誤魔化せても遺伝子情報までは誤魔化せないらしい。


「あの野郎..... 手ぇ抜き過ぎ」


「同感」


 精霊王ェ.....


「まあ、何とでもなるがな」


 リカルドは、にこっとドリアに微笑んだ。




 後日、御披露目された公爵家の双子は黒髪に茶色い眼で、多くの人々を落胆させた。

 そのカラクリを知るであろうアンドリウスは、チラリと目配せしただけで沈黙を守ってくれる。


 勿論、これはリカルドの変化魔法。


 こうして二人は晴れて平民となり市井に降った。


 しばらく国内を放浪し、ある日を境に煙のように姿を消す。


 その頃には彼等と付き合いのある人々もおらず、二人が行方不明な事に王家が気づいたのは、かなり後だった。




 そしてさらに年月がたち、王宮に不思議な報告が届く。


 隣国の辺境の街にオレンジ色の髪や黄昏色の瞳な一族がいると。


 その報告を受けた国王は、書面を握り潰し、箝口令をしいた。


 これに関しては不問とし口外無用にすると。


 訝る家臣らを追い払い、国王は王妃を振り返った。


「これで良いよな」


「ええ、貴方」


 微笑み会う老齢の二人。


 後に王位を継いだのは宰相の息子、アンドリウス。

 その横に寄り添ったのは聖女フランソワーズ。


 件の事件の後、彼女は新たに予知した未来を回避すべくアンドリウスに相談した。そのさいに自分が転生者である事も告白する。


 彼女の予知した未来は、いずれ王家の色が失われ、魔王が顕現すると言うモノ。


 それに関連し、隣国の王家の一族が発見され、魔女狩り的に追われ、囚われ、魔王の生け贄にされる凄惨な未来だった。

 人として扱われず、家畜のように繋がれ飼われ、近親で交合わされた結果、魔力の高い次世代が生まれるようになる。

 そして、その内の一人が絶望し、リカルドのように特異な変異を起こして闇落ちするのだ。


 あんの開発陣ども..... 鬼畜にも程があろうが。何でここまで彼女らを追い詰めるかなっ??


 後日談にまで張り巡らせられた罠。

 それを回避すべく、まずは前回の王家の失態を追求し、親戚であるアンドリウスが暫定的に王位についた。そして後の未来で魔女狩りの発端となる報告を握り潰す。

 後は運の要素が高いが、積極的に王子の離宮に女性を送り込み、孕ませ、王家の色を維持する事。


 アンドリウスが王位についたのは一時的なもので、いずれは王家の色を持つ者に返還される。


「そなたから相談を受けて、もう三十年か。....間に合ったな」


「はい。ようやく本当に彼女を守りきれました」


 勝った。


 万感の想いがこもった一言を脳裏に描き、フランソワーズの閉じた瞼から、一筋の涙が伝う。


 こうして、紆余曲折した複雑怪奇な物語が、ひっそりと幕を降ろした。


 その舞台に上がった彼女は、とうとうトゥルーエンドを掴み取ったのだ。


 誰も欠けず、件の二人は穏やかな幸せを手に入れた。きっと後の人々は、こう語るだろう。


 めでたし、めでたし。と。




 二千二十一年 三月二十七日 脱稿。

      美袋和仁



☆あとがき☆


 お粗末様でございます。

 

 本編には、裏・自棄っぱちのシンデレラという番外編が複数あり、これが直接的な行為をいたしてはないものの、あまりに病的な性的描写が多くふくまれていたため、なろうで垢バン直前までいった物語でした。

 今はヤバい番外編を削除して事なきをえましたが、思い返しても冷や汗がでます。

 こちらに掲載したのは、その安全版で、なろうから太鼓判をいただいたもの。

 投稿するか迷いましたが、可愛い我が子ですので、加筆修正して掲載しました。

 たのしんで頂けたら、嬉しいワニがいます。

 

 読んでくださった皆様に感謝を込めて。さらばです。いつかまた、どこかで♪


     By.美袋和仁

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自棄っぱちのシンデレラ 美袋和仁 @minagi8823

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