第2話 プロローグ(2. 真実の口)

噂と言うものは全てがあっている訳ではない。

中でも罪悪感を持っているという話は嘘である。

罪悪感は抱いていない。

だってあの人達が悪いもの。

心の中で言い聞かせながら湖の中を探しに探した。

でも、ペンダントの特徴はびっくりするほど当たっている。

銀色のペンダントは光に当てるとキラキラと煌めくラメが入っている。

それに、ペンダントをくれた者も、買った場所も私は知らない。

ペンダントが語りかけているのもそうだ。

ドスの利いた声で耳の奥を震わすの。

「我を見つけろ。」「手放すな。」「我はお前の仲間だ。」

私はこの声が怖くてたまらない。

怖くてたまらないというのに手放すことはできない。

何故ならば怖いほど懐かしく思うのだ。

絶対に離してはならない。

離したら絶対に後悔する。

そのような言葉が体をコントロールされるの。

もう腰が痛い。

痛いし見つからない。

空を見上げる。

鮮やかなオレンジ色が空を埋めつくしている。

早く、早く見つけ出さなければ日が暮れてしまう。

家に日が暮れたらもう帰るしかない。

夜遅くに返った時の親の顔が目に浮かぶよう。

焦る心臓を抑えて水の中を漁る。

どこ?どこよ!

バシャバシャと音を奏で加えて心臓の音も合唱を始める。

その時だ。


「え!?」


足を捕まえる緑の手…ではなく蛇のような細い青、いいや、水に溶け込む透明な尻尾のような。

喉に何かが突っかかって悲鳴も出ずに引きずり込まれた。

湖の底へ。

そして私はどうなったのか。

死んだのかなんなのかは誰も知らない。

本人すらも不明である。


―――・・・


「ふぅ~む。」

自室のベッドに横たわりぶ厚いオカルト本と思わしき物を読む。

「これオカルトじゃなくてファンタジー?いや、でもこの展開…。」

「お姉ちゃん、また読んでる。そんな真面目に読まなくてもいいのに。」

「おまっ今いいところなのに!?」

妹は呆れた声を出し本と薄い掛け布団を取り上げる。

私は手元に何もなくなった寂しさを埋めるように空の煙草の箱を手に取る。

「あ、煙草切らした。ちょっと買ってくる。」

「はいはい、行ってらっしゃい。」

ドアノブを捻って開けるとある事を思い出して妹の方をジッと見る。

すると気味悪がって妹はむすっとした顔になる。

「なによ。お金だったら百円返してからだからね。」

「ん?んーと。なんだっけな。」

何かを思い出したかと思ったが一瞬にして忘れてしまい「まぁいっか。」と言ってもう一度この部屋を出ようとする。

が、また妹の方を向いた。

「そういやそれオカルト本じゃなかったわ。」

「じゃあこれなんなの?」

「ま、ちぃも読んでみ。」

と言って今度こそこの部屋を出た。

「こんなの誰が真面目に読むのよ。」とぼやく妹の声は聞こえなかった。


***


「あったぼーよ!」

窓から窓へつたってやって来たのは幼なじみの問題児。

「ちぃちゃん何読んでんの?」

「みっちゃんが押し付けたんでしょ。」

「そうだっけ?」

とぼける返答を「も~う。」と返して「なにしに来たの?」といつものように聞く。

「そういやその女の子何歳だっけ?て気になって聞きに来た。」

「女の子が何歳か?そんな事書いてあったけ?」

私はペラペラと本のページを漁るとある一文が目に着く。

「『女の子はたったの十三で亡くなってしまったのか。それとも…。』十三だって!私たちの一個下じゃない。」

「ふぅ~ん。」

「ふぅ~んて。」

するとガチャッと自室の扉が開いた。

「お、みっちゃん来てたのか。この前のお話の続きをしてやろうか。」

「わ~い!」

問題児ことみっちゃんはダンダンと音を立ててジャンプして喜びを表現した。

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一緒に泣いてくれるの? 衣草薫創KunsouKoromogusa @kurukururibon

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