RNA君のゆううつ

いわのふ

RNA君のゆううつ


 むかし、あるところにRNA君がすんでいました。


 RNA君はとっても気がやさしくてよい子ですが、事務仕事がとっても苦手です。


 たとえばですが、「コピーしてこい」なんてのはもっとも苦手なことで、コピーをとると違ったページをコピーしちゃったり、間違いばかりしてしまいます。


 そのまたむかし、RNA君のことを「親玉のDNAさん」にもなれないバカヤローだとか「コピーミスばかりしやがって」といってののしった人がいます。


 その人はDNAさんという「えらい子」を発掘した人で、ものすごく威張っていました。RNA君がDNAさんになれない理由を「すんごい宗教の教義」となまえをつけていいふらしていました。


 RNA君は歯ぎしりしました。


 でもほんの少しの人は知っています。RNA君をDNAさんにしてくれる、すんごい機械があることを。


 知る人はその機械のことを「ぎゃくてんしゃこうそ」と呼んでいるそうです。


 ある晴れた日、ついにRNA君は街角にころがっていた「ぎゃくてんしゃこうそ」という機械にのみこまれてしまいます。


「あああああー、たすけてくれえ」


 RNA君はしんでしまうと思いました。


 そうです、RNA君は「ぎゃくてんしゃこうそ」でDNAさんに生まれ変わったのでした。


 そうそう「ぎゃくてんしゃこうそ」なんていういい機械をみつけることもめったにありません。RNA君は「ぼくってラッキー!」だとおもいました。


 RNA君はいいことをおもいつきました。RNA君にはおともだちがいっぱいいて、みんなDNAさんみたいになりたがっています。RNA君はぎゃくてんしゃこうそ、のことを話してあげました。


 おともだちの中には悪い子もいます。その子はちまたで「故炉奈」とかいう病気がはやっていることをしっていました。


 悪い子はおもいました。


 「へへっ。ばかなやつらが俺たちの仲間を量産して『にんげん』とやらにお注射してるっていうじゃないか。ぎゃくてんしゃこうそ、さえあれば……」


 『にんげん』はDNAさんをつかって自分をコピーして増殖してるみたいです。『にんげん』とやらがまた妙な病気にかかって死んじゃいはじめたのは、それからしばらくしてからでした。


──────────


 この小説はフィクションです。この小説中に登場する「RNA」,「DNA」は実在する科学用語を模したものではありません。また、実在するいかなる科学的事実にも根拠するものではありません(と思います)。


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RNA君のゆううつ いわのふ @IVANOV

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