第1話
「西野 沙希です。よろしくお願いします。」
そう挨拶した女はとても華奢な体をしており、艶のある少し長めのボブの髪を靡かせていた。
顔立ちは綺麗に整っており、可愛いとも感じ取れるし、綺麗とも感じ取れる、清楚な女の子。
クラスの男は動揺を隠し切れていない様子だった。
まぁ、どうせ俺と関わる事はないだろう。
そう思っていた矢先に担任が口を開いた。
「席はどうしような、上村の隣が空いているからあそこに座ってくれ。」
え、俺の隣?
そう、上村 奏志こそ俺の名前だ。
「はい。分かりました。」
返事をした西野がこちらへゆっくりと歩いて、ついに空席の前に着いた。
「よろしくお願いします。上村くん。」
「あぁ、よろしく。西野。」
俺にしては上出来だったと思う。いつもなら怖がられて会話にすらならない。しかし、今は自然と話せた。
西野は落ち着いた表情で席についた。
周りを見渡すとクラス中から注目を浴びていた。
当然俺ではない、西野だ。
俺は極力西野とは話さないようにしよう。
なぜなら俺と一緒にいると周りから冷たい目で見られるから。西野にとってもそれが良いと判断した。
そんな事を思っていると西野はきょとんとした顔で俺に話しかけた。
「上村くん。この後校舎の案内をして欲しいんですけど、お時間ありますか?」
「いいけど、俺はクラスからハブられてるからな、俺と関わるのは極力やめた方がいいぞ。」
西野は黙った。なにも言えないという感じだろうか。
まぁ、仲が良くなるな越した事はないが、そればかりはクラスの男が許さない。俺ならまだしも、今現在上がりきっている西野の株まで下げてしまうからな。
「いや、隣の席なんですから一緒に周りましょう。」
「やめた方がいい、そこらの一軍男子たちと周りな。」
「いいから行きましょう。」
なかなかしつこい。
「正直に言おう。嫌だ。行きたくない。
早く帰りてーんだよ。」
そう言うと西野は小さなため息をついた。
そして再び口を開く。
「今わかった事があります。」
西野は鋭い視線で俺を見た。
「私はあなたが嫌いです。」
そう言って西野は席を立った。
夏の瞬き ふじたつ @fuji_0717
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