第2話
翌朝、往復期間分の荷物をまとめ、約束のハチ公前にやってきた。
『やあ!君が新田君だね!デミウルゴス日本支社代表の南晃(ミナミアキラ)だ!よろしく!やっぱり待ち合わせと言ったらハチ公前だよね!』そう言って南は私は手を差し伸べ握手をした。
勝手なイメージだったがスーツに身を包んだきっちりとした服装の人が迎えに来るものと思っていたが、予想よりも随分フランクないでたちと軽い口調、そして何より日本支社代表だというのにその若さに少し驚いた。能力主義の会社というのは知っていたがまさか自分とそんなに歳が離れて無さそうなこの人物が日本支社の代表を務めているだなんて。
『本題の件が気になるだろうけどロケットの発射まで時間がなくてね!詳しい説明は道中にさせて貰うよ!』
南に促されるまま車へと乗り込み、東京湾を埋め立てて作られた東京国際宇宙ステーションへ向かった。
『さて、何から話そうか』
南は少し笑みを浮かべ、好奇心に満ちた表情でこちらを見ていた。
『君の件については僕を含めデミウルゴス上層部のごくわずかなメンバーにしか知らされていない。つまり機密情報案件となっている。僕も君の人事の詳細までは知らされていないんだ。新田くん一体君は何者だい?』
そんな事を言われても今回なぜ私が呼ばれたのか自分でも分からない。日本の田舎で生まれ育ち、父は幼い頃に蒸発、母親と母親の実家で祖父、祖母と4人で暮らしてきた。田舎で農家を営むただの平凡な家庭の自分にはなんの人脈もコネも何もない。
『それが私にも分からなくて…。以前入社試験を受けましたが不採用でしたし…』
返答に困った私を見て
『ふぅん。君にも呼ばれた理由が分からないのか…。益々興味深くなってきた!ああすまない!説明をすると言っておいて逆に質問をしてしまったね!』
そう言って笑うと南は今回の移動の簡単な説明をしてくれた。
『まずは東京宇宙ステーションへ行き、ロケットの発射前に簡単な適正訓練を受けてもらうよ!訓練といっても昔と違って機体の性能が飛躍的に向上したからね。無くても構わないんだが名残で残ってるんだ。まあ日本の様式美ってやつかな』
確か海外では事前の訓練なしに飛行機のように宇宙へ行けるようになったと聞いたことがあった。初めての自分としては簡単な訓練でもやっておく方が安心ではある。
『それが終わったらロケットに乗り込みいざ宇宙の旅へ。およそ48時間で月に到着さ!その間はデミウルゴスが誇る最新ロケットの船内で快適な宇宙(そら)の旅を楽しんで貰えると思うよ!そういえば君は宇宙は初めてかい?』
宇宙開発競争により、月への人類の進出が進み、民間の宇宙旅行も当たり前となった現代においても普通の大学生がおいそれといけるものでは無かった。今回この話を聞いてたとえどんな内容であったにせよ宇宙へ、月へ行くことができる。それはもとても魅力的だった。
『ちなみに月にウサギはいないから残念に思わないでね!代わりにウサギ型ロボットがいるから!』
南の宇宙にまつわるたわいもない話を聞いているうちに東京宇宙ステーションへ到着した。
地球に似た惑星で1人で生活することに。 すぎとも @sugitomo7
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