地球に似た惑星で1人で生活することに。

すぎとも

第1話 

見渡す限り満点の星空。

星たちの輝きを邪魔する街頭や照明もここにはない。

一昔前の若者であれば、この星空をSNSにあげ、沢山のいいね!を貰えたことだろう。


しかし、この景色は自分にしか見ることができない。SNSは愚か惑星軌道の兼ね合いから地球との交信が月に一度しかできない今の私には、この景色を誰かと共有する術はない。


そう、ここは私しかいない惑星なのだから…。



〜半年前〜

『今回もダメか…』

企業からの不採用の通知を確認し、肩を落とす。これで何社目だろうか。ここまで来ると慣れそうなものだが、不採用の文字を突きつけられるとやはり辛い。


売り手市場と言われる近年の就活情勢と相反し、私の就職活動は上手くいっていなかった。理由は分かっていた。自分が将来何になりたいのか、何がしたいのかこの期に及んでまだ迷っているからだ。取ってつけたような志望動機はプロの人事にはお見通しだった。

つまらない田舎暮らしから逃れるように、大学進学を機に都会へ来たものの、楽しかったのは最初の数ヶ月。慣れてしまえば次第に都会の嫌な所が目につくようになった。

どこにも馴染めず、目標も見つけられないまま、月日は過ぎ、この有り様だ。

周りの友人たちはすでに就活を終えており、焦りだけが募った。


宇宙事業大手のデミウルゴスから連絡が入ったのはそんな時だった。

2000年代前半から民間の宇宙開発が進み、熾烈な競争に勝利して日本の一ベンチャー企業から世界的な企業へと成長したのがデミウルゴスだった。この企業の採用方法は個性を重視し、学力だけでなく体力や表現力など、他の人にはない能力を備えた人材を採用することで有名であった。

物は試しにと私も入社試験を受けていたがあえなく撃沈していた。


『今更一体なんのようが…』

送られてきたメールを開くと人事について連絡したいことがあるため、3日後の15時に本社へ来るようにと記載されていた。


『3日後本社にって、この会社の本社って確か月だったよな…』

現代では宇宙開発が進み、私が生まれる少し前から人類は月へ移住することに成功していた。アポロ11号は月まで4日と6時間の時間を有したが現代はその半分以下の時間で移動が可能となった。間に合わなくはないがかなり急な話だった。


メールの続きには明日の朝8時、ハチ公前に迎えをよこすと書かれていた。今も昔も東京の待ち合わせといえばハチ公前である。

突然のメールに多少の怪しさを感じながらも、大企業からの誘いを断るほど今の私に余裕は無かった。

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