あとがき
ー本編についてー
前作【Ace in the hole. ー最後の切り札ー】のスピンオフとして書き始めましたが、明るい話を目指したのに、前作が暗い&重いので、グレーなお話になってしまいました。
物語の本流は、天神侑の再起と日常です。
それから、前作で登場したキャラクター達が、今頃どうしているのかという後日談ですね。彼等が遊ぶには舞台が小さかったかな、という印象。
作者としての作品のテーマは逆転。
状況も展開も立場も善悪も、とにかく引っ繰り返していこうという挑戦作でした。あらすじを書くのに苦労しました。
次作を書くなら、もっとスケールを大きくしないと駄目ですね。物語が長くなってしまったので、湊とムラトのポーカー勝負に落ち着きました。
作者として、努力する全ての方へのエールを込めました。皆様の努力が報われる日がやって来ますように。
ーエンジェル・リードについてー
善悪とは別に、自由で気楽なキャラクターを作りたかったんですよね。チートではなく、どんな舞台でも活躍し、生き延びられるようなキャラクターを。
そして、ホラーもサスペンスも、ファンタジーも人間ドラマもやって行けるように適応力が高く、更に血の通った奴等だと良いな、と。
お蔭で、若い芸術家に資金投資する個人投資家という設定を完全に持て余していましたね。千里の道も一歩から、というくらいですから、彼等はこれで良いのかも知れません。
ーVSムラトー
腹の底を読ませない、計算高く純粋なキャラクターを目指しました。熱砂の国にあった身分階級や貧富の差、クーデター等の様々な問題。エンジェル・リードまで波及したのはバタフライ効果なのか。それとも、策略だったのか。
翡翠が現れなければ、エンジェル・リードは負けていたでしょう。
ー登場人物についてー
■
元国家公認の殺し屋で、現在はエンジェル・リードの窓口係をしている。金髪碧眼の優男だが、超人的な身体能力を持っており、近接戦闘では最強と呼べる実力者。
過去に人体実験を受けており、脳に爆弾を抱えている。現在のところは湊の開発した薬で効果は抑えられている。
忠信高く無欲な姿から、湊や航はサムライと称している。
■
エンジェル・リードのボスで、他人の嘘を見抜く能力を持っている。見た目は天使のような美少女だが、青年。デイトレーダー。裏方担当なので、喧嘩や戦闘になると大抵負ける。物事を厳密に定義しない人。
イメージはヤドクガエル。
見た目は綺麗だけど、猛毒がある。
■
湊の双子の弟で、ニューヨークの大学に通っている。几帳面な性格なので、日々を丁寧に送る。人間関係で挫折した過去があるので、捻くれ者。バスケットボールのクラブチームに所属している。趣味は料理、バスケットボール、バイク、登山など。超感覚的知覚能力を持っている。
イメージはロシアンブルー。
懐く相手を慎重に選ぶ。
■
ハヤブサの弟子であり、見習いの殺し屋。
翔太の過去については前作をご覧下さいませ。
御人好しで真面目。湊とは友達であり、何かと世話を焼いていたので侑に『番犬』と呼ばれている。
イメージはゴールデンレトリバー。
信頼出来ない語り手。
■
裏社会の抑止力、最速のヒットマンと称される殺し屋。凄腕のスナイパー。
無愛想、ぶっきら棒で口が悪いので、湊や侑とよく喧嘩になる。特に、侑とは犬猿の仲。湊の元保護者。厭世家で皮肉屋。
■ムラト・ラフィティ(19)
熱砂の国の大富豪、その長男坊。ローマングラスのような美しい青い目を持つ。
陽気な青年であるが、ピエロを演じられる切れ者でもある。幼い頃から暗殺の危険に晒されて来た。目的の為なら手段を選ばない冷徹さを併せ持つ。
その目的は身分階級の撤廃で、父親の暗殺。エンジェル・リードに父親であるカミール・ラフィティを暗殺させる為、策略を巡らせる。
■アーティラ(19)
ムラトの従者の少女で、争いの無い平穏な世界に憧れている。ムラトに向ける感情が恋慕なのか憧憬なのかは、彼女自身も分からない。武器の類を使い熟し、敵対勢力を殲滅する。雇い主である湊と対等な侑に、嫉妬と羨望を抱く。
■バシル・イルハム(19)
熱砂の国出身で、飛び級でニューヨークの医大に通う医学生。父親は赤い牙と呼ばれる過激派組織の主導者であったが、本人は何も知らなかった。無知な善人。
ー各話ー
1.水底のマグマ
「俺は正義も悪も信じない」
⑹掃き溜め 天神侑
或る日、都内で拳銃を使った殺人事件が起こる。
犯人の目的や正体も不明のまま、連続銃殺事件へと変わって行く。
そんな中、捜査一課の坂田冬馬は、本部長から指令を受け、事件解決の為にエンジェル・リードの元を訪れる。
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エンジェル・リードが最初に観測した波ですね。
部外者から見たエンジェル・リードの胡散臭さを描きたかったんですよね。その為には普遍的な正義の人が必要だと思い、坂田を一時的に登場させました。刑事ドラマ風を目指してみました。
2.十字架の所在
「命に替えても守るよ」
⑶家族 天神侑
事務員を雇いたいという湊と提案で、エンジェル・リードは南方花という若い女性を受け入れる。事務経験の無い元保育士という肩書きと湊の提案を不審に思った航は苦言を呈する。
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念の為に言っておきますが、職業に対する偏見はありません!
テーマは、教育という名の殺人。エセ社会派風ですね。グレーゾーンを攻めてみました。部屋の中の象を真っ先に処理するのが湊かな、と。善人ではないんですけどね。
3.熱砂の宝玉
「愛や信頼をお金で買うことは出来ないけど、投資することは出来る」
⑽山札のエース 蜂谷湊
アラブの大富豪ラフィティ家の長男、ムラトが来日する。エンジェル・リードは案内と護衛の依頼を引き受けるが、ムラトには或る目的があった。
ムラトの目的とは、身分階級を撤廃する為のクーデターだった。夢物語だと苦言を呈していた湊と侑だったが、謎の武装組織から襲撃を受ける。
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ムラトは獅子身中の虫ですね。切り捨てるにはリスクが高く、受け入れれば飲み込まれる。カジノとアクションを書きたかったんですよね。
4.殺し屋たちの奇想曲
「忘れない為だよ」
⑽追悼 蜂谷湊
繁忙期に侑がインフルエンザに罹り、湊は仕事に忙殺されていた。睡眠不足と疲労困憊で飲食店へ出掛けた湊だが、提供された食事に毒を盛られたことを知る。
スネークと呼ばれる殺し屋のギルドから命を狙われていることを知った湊は、友達の助けを借りて窮地を脱する。その騒動の背景には、侑の過去が関わっていた。
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湊も侑も人殺しが好きな訳ではないけれど、身に掛かる火の粉は振り払う。二人の関係は、天神新を抜きには語れないと思ったので書きました。
5.誰が駒鳥殺したの
「俺は赦しというものを知っているけど、報復することも知っている。君達は、罪には罰が下ることを身を以って知るべきだ」
⑼以毒制毒 蜂谷湊
都内の進学校で女子生徒がイジメにより自殺した。
エンジェル・リードは或る事情からイジメの実態調査を行うことになり、友達の殺し屋と共に高校へ潜入調査をする。
誰が少女を殺したのか?
エンジェル・リードは目に見えない怪物に立ち向かう。
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これは賛否両論かなと思いながら、恐々と投稿した覚えがあります。エンジェル・リードは正義の味方ではないので、このくらいはやるかな、と。
テーマはそのまま、誰が駒鳥を殺したか。
6.毒と薬
「雨の日に傘を差すのは、悪いことじゃないぞ」
⑽飼い主の責任 立花蓮治
裏社会の抑止力と呼ばれる殺し屋、立花の元に或る科学者の暗殺依頼が出る。調査を進める内に、立花はその科学者がエンジェル・リードと深い繋がりを持つことを知る。
最速のヒットマンVS元国家公認の殺し屋。
血を血で洗う復讐か、サレンダーか。
日の当たらない社会の闇で、エンジェル・リードは決断を迫られる。
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立花は、湊の元保護者ですね。ただし、善人ではないので容赦無し。エンジェル・リードが暴走したら、真っ先にやって来る殺し屋です。一番追い込んで来るのが身内というのが、彼等らしくて作者的には笑えますね。
侑と立花は、完全に水と油ですね。こんなに仲の悪いキャラクターを作ったのは初めてでした。
7.自殺志願者
「死が救いだなんて、絶対に違う!!」
⑽未熟な勇気 バシル・イルハム
ニューヨークに暮らす航の元に、怪我を負ったエンジェル・リードの侑が訪れる。療養の為の休暇期間を穏やかに過ごす二人だったが、界隈で起きる未成年者の失踪事件に巻き込まれる。
事件は連続猟奇殺人へ発展し、身元不詳の侑は警察に疑われてしまう。
犯人は何者なのか、目的は何なのか。
二人は、ジャンクマンと呼ばれる殺人鬼の正体に迫る。
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バシルは、無知な善人として書きました。
航の友達ならば、きっととんでもなく御人好しだろう、と。ジャンクマンも、良い感じに気持ち悪いですね。
侑の戦闘シーンが書きたかったんですよね。ヒーローは遅れて登場する、みたいな。侑は自分が窮地にある時に、誰かが助けてくれるということを知るべきなんだろうと思います。
8.彷徨う刃
『解釈するしかない。少しでも救いのある方にね』
⑼因果逆転 蜂谷湊
怪我の療養の為にニューヨークを訪れた侑は、美しいナイフを見付ける。
それは呪われたナイフとして数々の悲劇を引き起こして来た。エンジェル・リードは呪いの真相を確かめる為に調査を始めるが、其処には恐ろしい事実が隠されていた。
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因果逆転はいつか書きたいテーマだったので、満足です。翡翠はトリックスターですね。悪意のない殺意。
侑は、審美眼はあるのでしょうが、好戦的で、偶にとんでもないものを掘り出して来てしまいますね。湊は裏方にいた方が安全で有利だなと思いました。
9.夜空に光る
「この不平等な世界にも、差し伸べられる正義はある」
⑽地上の星 常盤霖雨
エンジェル・リードの湊は、帰り道に謎の剣道家に襲撃される。生きる世界と価値観の違いから相互理解不能のまま、湊は叩きのめされてしまう。
その頃、イジメにより女子高生が自殺したとして、加害者が刑事裁判に掛けられる。裁判に提出された証拠がエンジェル・リードの調査結果であったことから、湊は加害者側の弁護人と討論になる。
罪と罰、更生と未来。
正義とは何なのか。
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加害者が裁かれるならば、エンジェル・リードも同様なのではないかと思い、書きました。
湊は意外な所で躓きましたね。
頭脳労働が主なので、戦闘になったら大抵の場合は負けます。前作を読み直したら、悲しい程に弱いですね。当たり前に味方でいて、助けてくれる侑の存在は心強かったでしょうね。
10.君の手
「血塗れの手でも、未来は描けるよ」
⑺未来を描く 蜂谷湊
中国マフィアから救援を受け、エンジェル・リードは龍の巣へ踏み込む。
黒社会の総本山、青龍会の総帥は湊の大学時代の友達だった。青龍会内部の裏切り者探しに協力する中、侑は自分の手がどうしようもなく汚れていることを悟る。
明るい未来を掴む為に、エンジェル・リードは或る選択をする。
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これが本編で一番危険な取引ですね。またの名は、侑の子育て奮闘記です。
湊とリュウは、対等な友達として書きました。互いに立場があって、プライドがある。けれど、等身大の自分として話し合って、窮地には保身も考えずに助けに行くような関係。
侑はリュウではないし、そうなる必要もない。
侑の湊に対する見方が変わり、弟の遺したものが確かに繋がれていたというお話。
11.ダイヤの原石
「夢の終わりなんて見たくない!」
⑺リスタート 蜂谷湊
春休みに来日した航は、二人の若い芸術家に出会う。
彼等の才能はダイヤの原石だと確信したエンジェル・リードは、投資することを決める。
一方、中東の大富豪の長男であるムラトは海外の過激派組織に命を狙われ、エンジェル・リードに救援を求めてやって来る。
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原点回帰で、エンジェル・リードの活動。
彼等は、努力している人が好きなんでしょうね。その結果に関わらず、夢が叶う瞬間が見たいだけ。
新の生涯は美化出来ないのですが、否定も出来ないんですよね。だから、松雪のことを突き放せなかった。そういう時に道を切り開いてくれるのは、航なんでしょうね。
12.羅生門
「どうぞ、お好きな地獄を」
⑽フーダニット 蜂谷湊
世界の裏で何が起きているのか知る為に、エンジェル・リードは中東にある熱砂の国へ向かった。フィクサーの一人とされる大富豪と対峙し、エンジェル・リードは宣戦布告をする。
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物語が長くなってしまったので、一旦終了。
急ぎ足で纏めたので、とっ散らかっていますね。
ハイジャックされた時、湊はアドレナリンがドバドバなので痛みを知覚していない。目の前で刺されまくっている湊を見た侑のショックは計り知れないですね……。
英雄という名の泥を誰が被るか、というお話。
実は、プロットだけ作って要所の判断は登場人物に委ねるという作者的には新しい試みを致しました。最後の選択も、湊は譲らなかったですね。それでこそ湊ですね!
終章
飛ばない鳥
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飛べない鳥は不幸だなんて、勝手に決めてはいけない。
幸福か不幸かなんて他人が決めることではないし、正しい答えが人生の全てではない。そんなお話でした。
作品を読んで下さり、また登場人物を愛し、私の拙い創作活動を支えて下さった読者の方に感謝を申し上げます。
そして、素晴らしい作品を生み出し続けている全ての創作者の皆様のご活躍を心より応援致します。その努力が報われますように。
此処まで読んで下さって、ありがとうございました!
エンジェル・リード mk* @mk-uwu
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